北欧休日(16)~五種の神器プラスアルファ

<前回>

 欧米への旅行は、食の不安が大きい。フランスやイタリア、スペインといった美食の国以外の地域へ旅行する際に、私はいつも「五種の神器」を持参する。

 醤油、わさび、味噌汁(インスタント)、茶(ティーパック)、そしてカップ麺。

42583_2醤油

 私はバター味が苦手で、一食二食ならともかく、連日食べ続けると、胃の調子がおかしくなる。そこで、醤油とわさびの出番だ。

42583b_2わさび

 北欧旅行中は、様々な場面で醤油とわさびが活躍してくれた。朝食のゆで卵に醤油を垂らしたり、一部味の薄い料理はちょびっとわさびでポイントをつけたりして食べると、同じ食材でも表情ががらりと変わる。ノルウェーには、かまぼこに似た食べ物が存在する。それにわさびをつけて食べると和食と同じだ。醤油は、今回の場合、上海のカルフールで中華料理用の醤油しか手に入らなかったのだが、それでも十分間に合う。

 夜、ホテルの部屋に戻ると、カップ麺のほか、インスタント味噌汁やお茶は欠かせない。しかし、問題がある。欧米のホテルの場合、基本的にアジアのホテルの常備品である湯沸かし器はおいていない。「Hot Water」をくださいとホテルのスタッフに求めると、たいていな生ぬるいお湯しか持ってこない(薬を飲むと思われているようだ)。それじゃ、話にならない。

42583_3お茶(ティーパック)

 「Boiling water, very very hot boiling water」と、ふーふーしながら猿のように身振り手振り、ジェスチャーで「沸騰の熱湯」を要求する。すると、宗教の儀式でもやるのかと露骨に不審な目線を向けられてしまう。

42583b_3カップ麺

 ラーメンや味噌汁の次に、さらに何杯もお茶を飲むとなると、大量な熱湯が必要だ。小さな容器しか用意されていないホテルも多く、何度も何度も熱湯を部屋まで運搬しなければならない。部屋まで持ち運ぶ途中で熱湯が冷めてしまう。すると、カップ麺をホテルのロビーやレストランにまで持っていってそこで調製することにした。とてもスパイシーで、熱湯が注がれ匂いぷんぷんするカップ麺をもってホテルの中を闊歩していると、欧米人から不思議な目線を浴びることは避けられない。相当な勇気がいる。

 それでも、やる。自室の中であの一杯を美味しくいただく際の幸せは、言葉で表現することができない。

 次回は、小型湯沸かし器でも持参しようかな。すると、六種の神器となる。

 神器持参以外に、世界のどこに行っても、現地で必ず口に合う食べ物が一つや二つは見つかるのである。

42583_4チューブに入っているたらこ(ノルウェー)

 今回の北欧旅行で、堂々と「ベスト・ローカル・フード」に輝いたのは、たらこである。歯磨き粉のように小さなチューブに入っている。朝食のブッフェ会場に常備されている。バター代わりにパンに塗って食べるのが美味しい。

<次回>