北欧休日(15)~ノルウェーの食現場で考える捕鯨

<前回>

 ベルゲン滞在中の夕食は2回も連続、港のすぐ傍にある「ブリッゲロフテ・ステューエナ」で食べた。

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42569b_1行列の人気店、「ブリッゲロフテ・ステューエナ」

 1910年オープン、100歳の老舗レストランである。近海で獲れた魚介類を供する名店として連日満席で行列をなすほど人気が高い。

42569b_2魚貝のフリカッセ

 2食で以下の数々を賞味させてもらった。

 ●鯨肉の燻製カルパッチョ風
 ●季節の魚貝のフリカッセ(フレンチ風煮込み)と蒸しザリガニのシャンパンクリームソース仕立て、野菜とグリル帆立貝添え
 ●ベルゲンの名物、バカラオ(Bacalao)、干ダラのトマト煮込み
 ●トナカイのヒレ肉、野菜とレッドオニオン、チャツネ添え
 ●アンコウの胡椒風味仕立て、ズッキーニ添え

 特筆に値するものは鯨料理。

42569_2鯨肉の燻製カルパッチョ風

 ノルウェーと日本は強い絆で結ばれている。両国は、同じ捕鯨国である。そして、反捕鯨の急先鋒・アメリカを前に、日本とノルウェーは、異なる姿勢をとった。

42569_3ベルゲン名物、干ダラのトマト煮込み

 ノルウェーは国民の間で徹底した議論と合意をもって、商業捕鯨を継続する姿勢に徹しているのに対し、一方日本は戦後のアメリカ追随の外交政策が捕鯨分野にも反映されたかのように、外交の自主性を放棄した。態度曖昧のまま、日本国内では、捕鯨や鯨肉を食すのがいささか後ろめたさを感じる状況がいまでも続いている。

42569b_3トナカイのヒレ肉

 日本という国は、きちんと議論する場が非常に少ない。議論というのは、ロジックシンキングをベースにし、様々な目線や観点から展開するものである。ゼロベース思考が大変重要である。たとえば、捕鯨に関しては、鯨はかなり人格化されているだけに捕鯨も食用行為もマイナス的に捉えられている傾向がある。確かにその側面は否定できない。しかし、それが一側面であり、すべてではない。もう少し国民的に議論して、全体像を見渡し、動物保護や経済利益(国益も)、国民性、宗教観、倫理観、価値観など多方面に渡って、ゼロベース思考に基づいて冷静な議論を展開し、最終的な総意形成を目指すと、もって行きたいものである。

42569_4アンコウの胡椒風味仕立て

 捕鯨問題は氷山の一角に過ぎない。日本の政治もいままともな議論がなされていない。国家運営は官僚に任せるという「愚民政策」の悪果である。次第に国民はものを考えなくなる。考える力を喪失していく。

42569b_4食後、ホテルの前で一服

 「捕鯨についてどう思いますか」という問いに、どのくらいの日本国民がきちんと議論に参加できるのか。鯨肉を口にしながら、考え込んだ。

<次回>