K製鋼所の相見積もり依頼

 金曜日、K製鋼所の総経理Uさんから当社に電話がかかってきた。中国現地法人設立代理コンサル依頼の相見積もりである。

 「予約制で、1時間2500元の料金を申し受けます」、当社の担当者が応える。
 「貴社にお願いするかどうかに当たって、貴社を拝見し、また担当者の経験や資質を確認させてもらうためですが、それでもお金がかかるのですか」、Uさんが驚いたようだ。
 「はい、その通りです。しかも、ご指定の日には、コンサルタントの予約がいっぱいです」、当社担当者。
 ???

 事務局の報告を聞いて、正しい対応をしてくれたと私が評価した。

 コンサルタントの資質を見極めることは大変重要だが、もっときちんとした事前調査のうえ、もっと鋭い質問をぶつけてほしかった。ただ、相見積もりを数社からとるだけでは、真の相見積もりにはなるまい。

 設立代行であれば、コンサルティングよりも、代行業者の方がはるかに料金が安い。当社の場合、ただの代行をしておらず、事業戦略の見直し、リスク解説、法務審査、諸制度の立ち上げと合わせて設立コンサルティングをしているので、1件にあたって40万元~50万元はする。

 ただ企業法人を設立するだけならさほど難しい問題ではない。肝心なのは、なぜ法人設立するのか、どうやって事業を軌道に乗せて利益を出していくのか、5年後、10年後の中国事業にどのようなビジョンを持っているのか、だったら、これからどのようにすればよいのか・・・といったことではないだろうか。

 それに、相見積もりを取るためにも、コストがかかる。たとえば、U総経理が当社を訪問するだけでも、彼にとって時間と労力がかかり、機会損失コストがかかっている。だから、まず、この会社は訪問に値するかどうか、ある程度の事前調査をする必要があるだろう。

 そして、守秘義務協定も結ばずに、自社事業計画をさらけ出し、設立コンサルの相見積もりを各社から取るのも、無用心ではないだろうか。進出相談でもしっかり守秘義務協定を締結し、有料で行うことは、こちらがしっかりと守秘義務を履行する証である。無料相談であれば、守秘義務は生じるだろうか。世の中は、権利と義務が常に抱き合わせになっているのも、そのためだ。道端で落ちている食べ物を拾って口にした場合、食中毒だろうと何だろうと、誰も責任は取ってくれない。

 相見積もりを取ることは大変重要だと思うが、そもそも見積もりの取り方を再考すべきではないかと思う今このごろである。