上場は経営者の夢とロマン?

 水野さんも、とうとう上場を考えるのをやめたようだ。

 6月12日付の水野さんのブログ記事には、以下のように記されている。

 「過去には、上場会社の社長になる(自分で作った会社を上場させる)のが夢、という発言をしていた事もあるが、今では決して上場したくない・・・出資者は、もう一人も増やしたくない」

 水野さんと最初に会ったとき、上場についてどう考えるかと聞いたら、「チャンスがあれば、自分の会社を上場させたい」という回答だったと記憶している。会話はそれでプツンと切れた。私は、徹頭徹尾の非上場派だったからだ(いまでも変わっていない)。

 「上場企業の株式を買う人間の目的は、通常キャピタルゲインであるため、必然的に短期利益の追求が主目的となる」と、水野さんがいう。もちろん、会社の成長を楽しみに株を長期保有する投資家もいるだろうが、投資の経済性からいえば、短期売買益が目的になることは否定できない。

 いま、私はエリス・コンサルティングという会社の100%の権益を保有している。いわゆる完全オーナー企業である。経営面では、いかなる出資も断り、かつ無借金経営に徹しているのは、他の株主やパートナー、金融機関を含む外部影響を排除する意図が込められている。出資者と経営者の同一性から、軋轢は生じないだろうし、経営理念の徹底には都合が良い。ただし、水野さんが指摘しているとおり、「オーナー企業の最大の欠点は、オーナーの一存に会社の経営が左右されるという点である」。オーナーの暴走は、日常の経営過程にある一つ一つ小さな意思決定から始まっていることは、経営コンサルタントである自分は誰よりも分かっているつもりだ。

 オーナー企業の経営者をけん制する機能は欠かせない。そのけん制機能をいかに設けるか、そして、機能させるか、大変難しい課題である。最近、新入社員や部下には、「立花のミスを指摘する」「立花と異なる考え方を示す」などを考課項目に盛り込んで、「異」を求める姿勢を強めている。効果はどうあれ、とにかくこの一歩を踏み出さなければと考え、危機感を高めている。

 水野さんの記事を読んで、改めて痛感した。