ミシュラン・スター料理人が上海にやってくる

44375_1譚氏の料理を食べる会、上海市内の某会員制クラブであった

 ミシュラン・スター料理人・譚国鋒(タム・クウォック・フォン)氏が上海にやってきた。氏の料理を食べる会は、9月26日に、上海市内の某会員制クラブであった。

44375_2ロブスターのココナッツロール
44375b_2Eroica Rieslingの白

 譚氏のレストラン「帝影楼」(2009年、ミシュラン1つ星)は、マカオの6つ星級ホテル・アルティラ (新濠鋒)の中にある。伝統的な広東料理に現代的な解釈を付け加えた料理の数々で、受賞を繰り返している。それまでには、氏はバンコクのペニンシュラホテルの料理長を9年間務め、在任中の1999年から2005年までの間、バンコク・ペニンシュラの中華料理は、「メトロ」誌と「ダイニング・アンド・エンターテイメント」誌に「ベスト・中華料理レストラン」と評された。また、2005年に氏は第5回世界中華料理連合会からゴールド賞を授与され、日本やタイ、ネパールの皇室のためにも料理を作っていたという。

44375_3フカヒレとマツタケのスープ
44375b_3蒸しハタの蓮の葉包み

 小さなダイニングルームは全席満席。事前、クラブから二度電話かかってきて、出席を確認された。

44375_4冬瓜煮込の海鮮あんかけ
44375b_4羊肉セロリとエゾネギ炒め合せ

 本日の献立は以下の通りである。ワインも料理に合わせて4銘柄セレクトされている。

ロブスターのココナッツロール、トリュフのマッシュルームロール
<ワイン>Eroica Riesling, Eroica, Columbia Valley, アメリカ 2008
フカヒレとマツタケの上湯スープ
蒸しハタの蓮の葉包み
<ワイン>Eroica Riesling, Eroica, Columbia Valley, アメリカ 2008
和牛の頬肉の煮込み
<ワイン>Series Cabernet Franc, Dona Paula, Mendoza, アルゼンチン 2007
冬瓜煮込みの海鮮あんかけ
<ワイン>Hanlin Hill Riesling Coonawarra, Clare Valley, Adelaide Hills, 南豪州 2009
柔らか羊肉、セロリとエゾネギ炒め合わせ
<ワイン>Cote de Beaune Villages AOC, Maison Louis Jedot Burgundy, フランス 2007
豪州産オイスターのそぼろ雑炊
ベークドタピオカプリンの蓮の身ペースト仕立て
<ワイン>Hanlin Hill Riesling Coonawarra, Clare Valley, Adelaide Hills, 南豪州 2009

44404_1満席の試食会会場

 創作料理というのは、革命的でこれはすごいぞというものは皆無だ。最終的にやはりクラシック系の伝統的な味に食通の人気が集まる。譚国鋒氏の料理は、創作系とはいえ、基本的に伝承を中心に所々創意工夫を加えているだけである。

44404_2和牛の頬肉の煮込み
44404b_2Cote de Beaune Villages赤ワイン

 ロブスターのココナッツロール。ロブスターは人気食材で、それを使った「創作」は全盛期を迎えている。ロブスターとココナッツのコンビは一見相性が良さそうだが、ココナッツの香りが強く、ロブスターはやや圧倒され気味で、素材派には「?」である。

 逆に、フカヒレとマツタケの上湯スープは素晴らしい。無表情なフカヒレを香りの強いマツタケで引き立て、インパクトをぐっと強くする。

 蒸しハタは広東料理の基本で特別なものを感じないが、和牛の頬肉の煮込みは絶品だ。「とろけるような」という表現以外に適切なものがないのが残念だが、口内で香りとともに肉が溶けていく過程は誠に至福のひと時である。日本米のご飯がほしくなる。

 冬瓜煮込みは特筆に値するものはない。最後の肉料理は、元々鹿肉の予定だったが、急遽羊に変更されたのは、食材の事情だろうが、人を驚かせるようなものはなかった。

44404_3牡蠣のそぼろ雑炊

 牡蠣のそぼろ雑炊。出汁はしっかりとっている。ブイヤベースの貫禄が漂い、濃厚で豊かな風味が楽しめて感動ものだ。

44404b_3ベークドタピオカプリン

 フィナーレのベークドタピオカプリンはまたまた絶妙な一品で良い句点をつけることができた。

 ワインには多くの不満が残った。なぜかリースリング中心のセレクションで、酸味は控えめだが果実香が強く甘口で、どんな中華料理にも合いそうだが、ちょっと・・・という感じ。食事に甘いジュースを飲む習慣のある中国人には、この手のワインが入門編になっていて良いのかもしれない。それなら仕方のないこととしよう。

44404_4試食会後バーで一服

44404b_4