ベトナム(3)~樹大招風、巨木と苗のベトナム政治経済学

<前回>

 「ベトナムは、中国ビジネスのヘッジとして今後大きな戦略的意義を持つ」

 2日間のベトナム・インタービューが終わった。全体的感想としては以上の一言に尽きる。

44889_1ホーチミン市の街頭

 リスクヘッジは金融投資に限らず、日常のビジネスにも大変重要である。中国投資、中国ビジネスは大変結構だが、中国の一極集中には賛成できない。地球ベースで物事を複眼的に考えるのが、この時代を生きるビジネスパーソンの常識だ。

44889_2サイゴン川の対岸、ホーチミン市の「浦東」???

 ベトナムはまだまだ、たくさんの問題点を抱えている。外資規制緩和やインフラ整備の立ち遅れ、行政サービスの非効率性、汚職や不正、法の運用の流動性、などなど。経済成長はあるものの、中国に比べると大変遅い。私が泊まっているホテルから見下ろすサイゴン川の対岸、いわゆるホーチミン市の「浦東」は、政府の掛け声があって何年経っても一向に開発が進まない。チャイナ・スピードに慣れた人間には理解できないことだ。すると、ベトナムはダメだ、所詮中国のNEXTになれないと考えてしまう。

 私は今回ベトナム視察に来る前、ベトナムは中国の「NEXT」になるかをずっと考えていた。いま振り返ってみると、これは、仮説の取り違いだった。「NEXT」という仮説、「中国の次は、ベトナムだ」という仮説が間違いだということに気付いた。

 中国が消えるわけではない。なぜ、「NEXT」を考えなければならないのか。ベトナムは逆立ちしても、中国に取って代わることは困難だろう。けれど、ベトナムは中国のヘッジ役を見事に引き受けてくれるだろう。「小」と「大」、「遅い」と「早い」・・・バランス取りに大きな戦略的意義がある。

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44889b_3ベトナムの春巻きいろいろ

 アジアの地図を広げて、消去法的に見ると、最後に残る国は、「ベトナム」、「インドネシア」と「北朝鮮」だ。インドネシアは政局が不安定で、地理的にも南半球に近い。北朝鮮はちょうど世代交替が進んでおり、あと5年~15年はかかるだろう。すると、目先はベトナムしかない。

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44889b_4マジェスティック・ホテル内

 「樹大招風」、中国のことわざである。「木が大きければ風当たりも強い」という意味で、比喩的には「地位が高いとなにかと風当たりも強い」という意味で、日本語の「出る杭は打たれる」よりも、現状を適切に表している。

 大国として貫禄を持ち始めた国は風当たりが強い。最近一連のニュースを見ても、分かることだ。企業にとってみれば、「政冷経熱」ならまだしも、「政冷経冷」になるとまさに死活問題だ。

 巨木は素晴らしいが、根元に生えてくる苗も無視しない方がいいだろう。

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