懐かしアルバム(9)~私の散策道、ロンドン・ハイドパーク雑感

<前回>

 ロンドンでは、私は「マンダリン・オリエンタル・ハイドパーク」に泊まる。そのホテルの裏には、ハイド・パークが一面と広がる。その公園を、ウェストミンスター地区からケンジントン地区までゆっくりと散策すると、2~3時間かかる。至福の時間である。

49860_2ハイド・パーク、マンダリン・オリエンタル・ロンドンをバックに(2005年8月)

 大変不適切ではあるが、ハイド・パークは、ロンドンの天安門広場と喩えたほうが分かりやすいだろう。公安警察の代りに、騎馬衛兵がパトロールするのがイギリスらしい。メトロポリスのど真ん中に、どーんと巨大公園を建設する。経済学的には、採算性が悪いのが言うまでもない。中国の大都会ではまず考えられないだろう。

 ニューヨークのセントラルパークを散策したときも、同じことを考えた。メトロポリスの貫禄が漂うシンボルだ。セントラルパークは、その広大さ(341ヘクタール)もさることながら、年間入場者数は2500万人に上り、摩天楼が林立するニューヨークのオアシスとして、大都会の喧騒の中に暮す人々の癒しの場となっている。

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49860b_3マンダリン・オリエンタル・ロンドンのエレガントな客室(2005年8月)

 ここロンドンのハイド・パークは、隣接するケンジントン・ガーデンと合わせると、その面積は日比谷公園の25倍、249ヘクタールあり、オアシス的な存在はもちろんのこと、大英帝国の重厚な面影を実感させてくれるスポットでもある。

 そして、それより何より、広大なハイド・パークの北東隅、マーブルアーチの近くにあるスピーカーズ・コーナーが面白い。演説は政治家の特権ではなく、一般市民にも「演説する権利」があると、設けられたこの場所は、民主主義の先進国の貫禄を世界に見せ付ける。

49860_4ハイド・パークの一角(2005年8月)

 経済的価値を直接に生み出さないかのように見えても、無形資産としての存在意義は歴史とともにプレミアムを増していく。このような都市計画のコンセプトが、中国にも受け入れられる日は来るのだろうか。

<終わり>