ケニア(4)~ワンマン操縦セスナ機でサバンナへ向かう

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 8月11日早朝、ナイロビのウィルソン空港(セスナ機専用空港)でセスナ機に搭乗してアンボセリに向かう。空港といってもまるで倉庫のような簡易発着場。これで驚いてはいけない。もっと驚くのは、行き先であるサバンナ上の空港だ。

85766_1滑走路しかないアンボセリ空港に降り立つ

 ターミナルビルがない。いや、正確にいうと、なんら建物もない。もちろん、航空管制塔も、駐機場も、搭乗ブリッジもなければ、燃料補給車も消防施設もない。

85766_2アンボセリに向かう機内
85766b_2操縦室前方に見えるキリマンジャロ

 これって、空港といえるのだろうか。確かにケニアでは、この類のサバンナ上の空港は、「Airport」といわず、「Airstrip」というのだ。つまりただの仮設滑走路、離着陸場である。

 広大で荒涼なサバンナに、あるのはたった一本の滑走路とライオンの足跡だけ。

 空港設備がない。チェックインカウンターもなければ、地上スタッフもいない。なんと、昨今世界の常識となる保安検査まで存在しない。液体だろうとナイフだろうと、好きなように機内に持ち込めてしまう。

85766_3セスナ機の操縦室
85766b_3ワンマン操縦中の機長

 飛行機が到着すると、パイロットが操縦室から飛び降りて荷物室を開ける。はいどうぞ、自分の荷物は自分で運べと。すぐに次の搭乗客名簿を出して、一人ひとりの名前をチェックしはじめる。搭乗客は自分の荷物を荷物室に放り込む(大体そこはロッジの送迎スタッフがやってくれるが)と、飛行機に乗り込む。

 全員搭乗が終わると、はい出発だと勝手に滑走して離陸する。着陸から次の離陸まで、わずか10分や15分も要さない。

85766_4アンボセリのサバンナに到着

 私がナイロビからアンボセリに向かうときのセスナ機は、なんと操縦士(機長)1名だけというクルー配置。操縦席は2席あるものの、副操縦士席が空いたまま飛行機が離陸した。完全なプライベート機ならまだしも、乗客を乗せた以上これでいいのか。私の限られた知識ではあるが、どんな小型機でも旅客機である以上、2名のパイロットが必要だ。機長も人間だから判断ミスや操縦ミスがまったくない保証はない。それを是正して安全運航を確保するのが副操縦士の役割だ。

 操縦ミスでなくとも、機長が何らかの急病で倒れたり、最悪な場合、気を失ったら飛行機はどうなるのか。10名いるかいないかの乗客の中にセスナ機を操縦できる人がいる確率はどのくらいか・・・。職業柄リスク想定を得意とする自分は、ついつい考えすぎてしまう。

 とはいっても、雄大なキリマンジャロを眺めながらの快適な飛行だった。

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