発展の渦中に放り込まれるミャンマー、得るものと失うもの

93260_1ロンジー着用

 ミャンマー滞在中に何度もロンジ―を着けている。ロンジーとはミャンマーの伝統的な巻きスカートで、男性も女性も着用している。それが結構丁重な民族衣装で、見た目ではカジュアルっぱいが、正式な場面でも着て問題ないし、むしろ、そのほうがよいと言われている。

93260_2ロンジー姿で市内を歩く

 実際に、ロンジ―を着けて外資企業に出勤しているミャンマー人もいる。スーツに負けないくらい正式な服装なのである。着物のような面倒な着付けは一切なし、布一枚で着方は極めてシンプル。男性は前であわせ、女性は横であわせて着る。男性の着方は足がよく開くようになっている(胡坐もOK)。女性の場合は少々タイトになる。布は両端を縫い合わせて輪になっており、着る時はその端を腰のところで折り込むようにするだけで、結ぶわけではない。ロンジ―の下は下着で、緩んだら失態かと思っても意外に緩むことはない。慣れると、ミャンマーの気候に合っていて快適だ。

93260_393260b_3ヤンゴン市内の青空市場

 90年代半ばにベトナムを訪問したとき、アオザイという民族衣装を着ている人が多かったが、最近行ってみたら、ほとんどのベトナム人は民族衣装を着なくなった。ミャンマーも同じ道をたどると思う。もしかすると、2~3年後ミャンマーを訪れたとき、ロンジ―姿のミャンマー人が姿を消しているのかもしれない。寂しいことだ、民族衣装が消えるのは。

 もうひとつは青空市場。経済発展に伴い、立派なショッピングセンターが出来たりすると、青空市場が消える。これも寂しいことだ。綺麗に包装された食品、バーコードでピッとレジにかけて買うのもよいが、青空で売られるワイルドな食材は何とも言えない魅力があって、そのナチュラル感が取って代わられることに抵抗を感じずにいられない。

93260_4ヤンゴン空港のチェックイン
93260b_4駐機中のミャンマー航空機

 発展や進歩、便利になることは現代の正義とされている。多様な価値観が存在するこの世の中、もう少し寛容な包容力が存続してもよさそうだが、なかなか時代の流れに逆らえないのはいささか寂しさを感じないだろうか。帰りの飛行機にチェックインしようと、ヤンゴン国際空港で手続きをすると、なんとカウンターの中にコンピューターは一台もない。乗客名簿を突き出され、自分の名前を見つけては係員がそれにチェックして、それもまたコンピューター印字ではない搭乗券を手渡される。

 発展途上国、ミャンマーには多くのビジネスチャンスが転がっていることは間違いない。3年後5年後のこの国、どうなるのか。発展の渦中に放り込まれるミャンマーにとって得るもの、失うもの、いろいろとあるだろうが、少なくとも、時代の変遷の目撃者になることは、私にとってかけがえのない体験となる。