データは調べていないが、私の体感温度的に、ミャンマーの物価はアジアの中でも、一番安い部類に入るのではないだろうか。
たとえば、マッサージ、それもかなり高級なところでも、全身と足の90分で1200円。市中の安いところはその半額程度だろう。外食は倹約すれば、100円程度で十分。
この物価水準と比べて釣り合わないのは、オフィスと住宅の賃貸料、そしてホテル代。オフィスや住宅の賃貸相場は、すでにシンガポールとほぼ変わらない水準にまで高騰している。外資企業やその駐在員が入居できる物件はかなり限られているので、需要が供給を大幅に上回っている。
賃貸相場が高騰しているだけでなく、一部の人気物件では、入居者(社)順番待ちになっている。まるで私が94年当時駐在で上海へやってきた時と同じ状況だ。経済成長のテイクオフに備え、その前夜の予兆である。
内容はとても料金に見合わない物件も多い。外資企業が集中する一等地にあるサクラタワーは、上海のオフィスビルでいえば三流以下だが、賃貸料は信じられないほど高い。
私が今回泊るシャングリラ系のトレーダーズホテル・ヤンゴンは、3か月前に予約して、170ドルプラス税・サービスで辛うじて取れたのだが、いまはすでに200ドルを突破し、しかも2か月以内の予約はほぼ満室だという。完全な売り手市場で、強気の商売ができるわけだ。
ちなみに、ヤンゴンのトレーダーズホテルは、そんな豪華な高級ホテルでも何でもない。もともと、トレーダーズはシャングリラの下級ブランドで、質素なビジネスホテルだが、ここヤンゴンのトレーダーズはすでに上級親ブランドのシャングリラ本家を凌駕する勢いを見せている。
ミャンマーバブルと言われるが、今は単に供給不足による相場高騰で、それが今後の1~2年で供給が増加すれば、幾分緩和されいずれ落ち着くだろう。本物のバブルはそれからではないかと思う。現に地図を広げて一目瞭然だ――。アジアでは、ミャンマー以外に残されるのは北朝鮮くらいしかないので、まさに最後のフロンティアだ。