金(ゴールド)はそこにあるのか?
トランプ大統領は、ケンタッキー州のフォートノックスに保管されている米国の金準備を監査すると述べた。「我々はフォートノックス、伝説のフォートノックスに行き、金がそこにあることを確認するつもりだ」とトランプ大統領は2月19日にエアフォースワンで語った。

アメリカの金準備に対する疑念は、長年にわたって議論されてきた。特に、金本位制が廃止された1971年以降、米国をはじめとする各国の通貨システムは信用に基づく法定通貨制度に移行し、無制限の貨幣発行が可能になった。この結果、過去50年間で金融市場は膨張し、通貨の価値は相対的に低下した。そして現在、米国の債務は36兆ドルに達し、持続可能性が疑問視されている。
トランプ大統領が、米国の金準備を監査する意向を表明したことは、この疑念を改めて浮き彫りにしている。「フォート・ノックスに行き、金が確かにあることを確認する」との発言は、政府内でも金準備に対する信頼が揺らいでいる可能性を示唆している。
そもそも、米国の公式な金準備は8,133トンとされているが、最後の監査は1953年であり、それ以来、実際に保管されている金の物理的な確認は行われていない。この長期間の監査の欠如は、金準備の実態に対する不信を増大させてきた。過去には、FRBが金を他国や機関に貸し出したのではないか、あるいは一部が消失しているのではないかとの疑惑も浮上している。
現在の金融システムは、金本位制の時代と異なり、政府が中央銀行を通じて無制限に通貨を発行できる仕組みになっている。米国政府の累積債務が36兆ドルに達する中、その裏付けとなる資産は十分にあるのか、という根本的な疑問が生じる。この債務の一部は、各国の中央銀行や投資家が米国債を保有することで支えられているが、これが長期的に維持可能なのかは不透明である。
特に、日本の状況は異なる。日本の国債のほとんどは国内の機関投資家や日銀によって保有されており、政府は「国債の国内化により破綻しない」と主張している。しかし、この考え方は、通貨の信用が維持されることを前提としており、米国のような金準備の不透明性が表面化すれば、日本の国債市場にも影響を与えかねない。
この点を考慮すると、トランプ氏の発言が示唆するように、米国の金準備が実際にどこにあるのか、またそれがどのように管理されているのかを明確にすることは、金融市場の安定にとって極めて重要である。仮に金が担保として他国に移転している、あるいは貸し出されているとすれば、金融システム全体の信頼性が揺らぐことになる。
今後、米国が金準備に関する透明性をどの程度確保するかが注目される。36兆ドルという巨額債務の裏付けが疑問視される中で、金準備の実態が市場の信頼を回復する要素となるのか、それともさらなる不安を引き起こすのか。トランプ氏の監査要求が、単なる政治的アピールにとどまらず、実質的な金融システムの改革につながるのかどうかが問われている。




