2025年7月、マレーシア日本国際工科院(MJIIT)において、新卒の入社前実務研修「ERIS Talent Class(ETC)」の修了式を実施した。本研修は1月に始まり、半年にわたって継続され、最終的に25名の修了生を送り出した。マレーシアにおいて初の試みとなったこのカリキュラムは、大変好評を博したものの、振り返れば多くの反省点も残された。

● マッチングの失敗と給与ギャップの壁
まず指摘すべきは、マッチングの失敗である。いくつかの日系企業に対して、非常に優秀な学生を引き合わせたものの、いずれもマッチングには至らなかった。問題となったのは「給与のギャップ」であった。優秀な学生が希望する給与水準は、日系企業の通常の賃金テーブルを超過しており、欧米企業やローカル企業が提供可能な高給の前には、日本企業は魅力を失っていた。
また、一部の日系企業に対して学生の推薦紹介(もちろん無償)を行った際にも、優秀な学生の推薦に対し、「必要ありません」との明確な返答を受けた。理由は、「定型業務をこなせば十分であり、考えて仕事をしてもらう必要はない」というものであった。

● 優秀人材への忌避と現状維持バイアス
私は、定型業務においても不断の改善やAI化によってコスト削減の可能性がある以上、そこに貢献できる人材の価値は高いと考えている。ところが、他の企業関係者の話によれば、「優秀すぎると、日本人駐在員上司の能力を上回ってしまい、かえって困る」という見方も存在するようである。
こうした保身的かつ現状維持的な志向について、私は善悪の次元で判断しない。人はそれぞれ利害関係を抱えており、非難するのではなく、現実として冷静に受け止めるべきだと考えている。
● 育成と改革の両輪戦略とその困難さ
企業の魅力を欠いたままでは、人材を惹きつけることはできない。当社の基本戦略は、「人材の育成」と「企業の改革」という両輪から、長期的にアプローチを行うことである。とりわけ企業改革については、対象となる日系企業がごく少数に限られ、そこにたどり着くこと自体が、運を含めて極めて困難である。
この取り組みは短期的な成果を期待できるものではなく、3年から5年をかけて、ようやく数件の成功事例が生まれるかどうかという世界である。

● 学生の本音と日系企業離れの構造
先日、MJIITにて学生への就職方向性に関するヒアリングを行ったが、多くの学生は回答をはっきりと口にすることを避ける傾向が見られた。ふと気づけば、彼らは日本政府の国庫補助金によって研修を受けながらも、実は「日系企業には就職したくない」と感じているのかもしれない——しかしその本音を口にするのは憚られるのかもしれない。
実際、日本政府が出資するMJIITという大学においてすら、日系企業への就職率が極めて低いという事実は、まさにこの構造的な問題を象徴しているように思われる。
日本企業組織の改革には、どうしても時間がかかる。当社は、将来の変革に向けて、長期戦を覚悟して取り組んでいる。




