高市政権の終幕条件――戦争は起きないが、生活不便が政権を倒す

● 戦争回避の5本のチャンネル

 高市発言で日中戦争にはならない。偽左の馬鹿騒ぎだ。戦争とは、別の解決チャンネルがすべて潰れた時、あるいは特別な政治的意思決定があった場合にのみ発生する。今回のケースはその逆で、むしろチャンネルが多すぎるほどだ。

 第一に外務省ライン。金井局長が北京で頭を下げた瞬間に、中国は高市を「公式ルート外の雑音」と認識し、相手にすべきは官邸と外務省だけだと整理した。
 第二に公明・創価ライン。宗教外交として最も安定し、かつ中国が深く信頼してきた窓口で、高市の発言がどれだけ騒音でも、公明が存在する限り中国は「自民党全体の敵対」とは見なさない。
 第三に財界ライン。自動車、機械、半導体、商社、金融――日本企業と中国政府のリンクは巨大資本外交の要であり、これが生きている限り戦争リスクは現実的にゼロである。
 第四に自民党主流派ライン。岸田・麻生・茂木・二階の各派が長年築いた政党外交が機能しており、中国にとって高市は「対話対象ですらない軽量級」。
 第五に日中議連ライン。議会外交は内閣とは独立して動くため、危機の際に最も強力な安全装置となる。

● 高市排除の3つのトリガー

 したがって結論は単純で、高市が発言を撤回しない場合、日中間の裏チャンネルは戦争回避ではなく高市排除に収束する。時期を決めるトリガーは三つである。

 ① 日本国内の支持率が下落を開始した瞬間、 
 ② 高市がさらに暴走(再発言や靖国参拝)した時、 
 ③ 中国の「生活圧力型」経済制裁が臨界点へ近づいた時

 ――これらは時間差であっても連動し、最終的には「高市を外す」という一点に収束する。そして5本のチャンネルの大半が「反高市」であり、彼女の基盤は政党内外で崩壊している。公明は敵、麻生は不信、二階は敵、岸田派は敵、財界は敵、官僚は敵、自民主流派も敵。唯一の支持者は偽右大衆とB層だが、彼らには政治的力が皆無である。

● 高市支持率下落の瞬間

 こうした状況を踏まえると、高市内閣の支持率が本格的に下落し始める瞬間は、言葉の炎上でも外交の緊張でもない。一般市民の生活空間、つまり「日用品の世界」に異変が生じた時である。政治意識というのは頭ではなく身体で変わる。特に日本の大衆は、思想では動かず、生活の痛みで一気に態度を変える。

 中国が「蛇口をひねる」とは、対日貿易の全停止ではなく、特定の生活必需品に軽く負荷をかける程度の措置でも十分効果がある。まず物流や原料の検査を少し遅らせるだけで、小売現場の日用品の棚に「欠品」と「値上がり」が散発し始める。これは政治論争よりも遥かに国民の神経を直撃する。

 そして日本人の感覚は極めて敏感だ。いつも買えるはずのトイレットペーパーが微妙に減り、ドラッグストアで生理用品の種類が減り、下着が入荷未定になり、ティッシュの値札がじわりと上がる。このズレが市民の不安を一気に作り出す。生活不便の入口が見えた瞬間、中間層の心理は政治への警戒に変わり、安定志向へ戻ろうとする。ここで高市のような強硬型は一気に信頼を失う。

 中国は人道上、医療・救急領域には手を付けない。医薬品原料や医療器具を最初から止めるような乱暴なことはしない。なぜなら、それは国際的な非難を招くし、日本国内の被害者意識を強め、右派の鼓舞材料になり逆効果だからだ。

● 「下半身体験」が一番効く

 中国が狙うのは、市民が「怒り」ではなく「不便と不安」を感じる領域である。それが日用品であり、特に「下半身体験」に属するカテゴリーである――。

 トイレットペーパー、生理用品、紙おむつ、下着、衛生用品は、政治思想や国際関係よりも生活そのものに直結する。これが動揺すると、市民の精神は一瞬で変わる。国家安全保障より、まず自分の生活、家族の暮らし、身体の快適さが優先される。ここへの影響は、偽右やSNS世論よりはるかに重い。

 中国が軽く蛇口を締めるだけでよい理由は、日用品の多くが中国製そのものか、中国由来の素材や部材で成り立っているからである。中国はわざわざ輸出停止を宣言する必要はない。通関の検査を厳しくし、書類の再提出を求め、輸送優先順位を下げ、コンテナの回転を遅くするだけで、数日〜数週間で日本の棚の風景は変化する。

 市民はまず「なんか品薄だな」と感じ、次に「また値上がりか」と苛立ち、最終的に「政治の緊張が生活に影響しているのでは」と推察する。ここで支持率は急落モードに入る。どれほど強硬な発言でも、生活が安定していれば右派は維持される。しかし生活不便が現れた瞬間、右派は消え、中間層は恐怖に転じ、主婦層は政権を拒否し、企業は悲鳴を上げる。

 つまり、中国が狙うのは「大衆の実感」。薬を止める必要はない。爆撃も不要。日用品の欠品と値上がり、そして下半身にかかわる衛生品の乱れこそが、政権の支持率を地下まで突き落とす最短ルートである。政治発言では落ちない支持率が、生活の痛みでは一瞬で崩れる。高市政権はその構造的弱点の真上に立っている。

● 自民党の学習効果――「No more 右」

 今回の高市騒動は、自民党にとって「偽右をトップに据えることの致命的リスク」を可視化した事件になった。今後、党が同じタイプを総裁に担ぐことはまずない。理由は三つだ。

 第一に、偽右は声は大きいが票にならないことが露呈した。SNSでは騒ぐが、組織票にも財界にもつながらず、選挙戦略としては完全に不採算部門。政権の実務を支える基盤にならない。

 第二に、偽右系トップは外交で扱えない存在になる。高市だけで中国・韓国・台湾すべてを同時に刺激し、外務省が火消しに走る羽目になった。これでは国家運営が成立しない。

 第三に、党内主流派が偽右はリスクしかないことを骨身に染みて理解した。経団連も官僚も、公明も全部離れる。誰も支えない。

 結論、今回の件で自民党は学んだ。偽右は利用はするが、絶対にトップには据えない。高市はその実験と失敗の象徴になった。

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