帰郷の感動

 心がほぐれる、変な表現だが――。

 クアラルンプール空港に向けて飛行機が最終の着陸態勢に入ると、マレー半島の大地に豊かな森、ジャングル、鮮やかな緑が一面と広がる。遠方には青い海と白い雲、いつもと変わらないこの風景に見入っていると、目頭が熱くなり、涙が溢れてくる。

106557_2今日もクアラルンプールの朝は快晴、私の心も快晴

 帰ってきたぞ。帰郷の感動をいつから覚えたのだろうか。まだこの地に住んで数か月もたっていない。戦場から戻ってきたときのような放心状態で全身から力が抜けてゆく。それと同時に一種の罪悪感、自己嫌悪に包まれる。戦火から逃れてきた人間にとって、後方が平和であればあるほどこの罪悪感が強まる。

 「中国はそのうち、きっと状況が良くなるよ。5~6年後、また戻ってきてくださいね」。先日の上海忘年会でスタッフに言われたとき、私は胸が裂けるほど痛かった。戦士にも後方が必要だと自己主張をしようと思ったが、言葉が口から出てこなかった。

 平和の日々が戻ってきた。そうしているうちに、また戦場に帰還する意志が日に日に強くなっていく。いつの間にか、これが私のライフスタイルになった。来月も中国の大地に戻って戦うぞ、倍返しだ!