体感温度の中国経済(5)~「価値がない」?商品やサービス編

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 中国、特に都市部の物価がどんどん上昇している。

 上海の物価は、東京と変わらないという人もいるが、私の体感温度的には、東京より高いものもあると感じている。単純に為替レート換算の額面比較でなく、同じ金額を払って得た商品やサービスの価値比較では、上海の場合「中身がない」「中身が薄い」という実感は払拭できない。この1年、特に強烈に感じている。

 最近、月例の上海出張は、私はホテルを使わなくなった。上海時代に住み慣れたマンションの部屋をウイークリーで格安で借りている。上海のホテル、ほんとに高い。とんでもないような値段設定だ。少しましなランクになると、1泊千数百元あるいは2~3千元台も珍しくない。クアラルンプールやバンコクあたりなら、最高級ホテルのスイートに泊まれるほどの値段だ。それに値段が高いだけで、サービスは全く追いついていない。世界一コスパが悪い。

 もう一回住宅の話に戻るが、上海市内の一般中国人が使う賃貸住宅も異常に高い。私の事務所が入居している虹橋地区では、少しまともな住宅になると月2~3000元はかかる。給料の安い若者の間では、ルームシェアが当たり前だ。それを専門に経営している家主もたくさんいるようだ(違法経営も多い)。一方、不動産の供給過剰、ゴーストタウンやゴーストビルはあちこち見られる。まさに、需要と供給のミスマッチだ。

 じゃ、給料水準をどんどん上げればいいかというと、それも大きな問題が横たわっている。労働集約型の工場では給料を上げてもワーカーが集まらない。一方、毎年700万人以上もの大学生の新卒が社会に押し寄せ、賃金相場はたかが3~4000元でも内定をなかなかもらえない(上記の賃貸相場には到底耐えられない)。これも笑いに笑えないミスマッチだ。単純に労働市場の需要と供給でいえば、賃金の実勢相場では、中国のブルーカラーはとっくにホワイトカラーを追い抜いているはずだ。なぜなら、単純労働力で成り立つローテク製造業こそが中国の競争力なのだからである。

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