お金の出し方、世界のODAと中国のODA

 先日ベトナム出張の帰り、ハノイ・ノイバイ国際空港第2ターミナルの正面入り口前に、「空港ターミナルは日本のODA(円借款)を受けて建設された」という記念碑があることに気付いた。

150421-0746-Hanoi Airport

 日本の援助を受けたことを自国民に堂々と開示している。その辺の話になると、ベトナムと中国の比較になったり、日本の対中ODAへの異論も噴出するだろう。あえてここでその話はしない。その代わりに、中国の対外ODAについて考えてみたいと思う。

 えっと思われるかもしれない。中国とODAの話では、あくまでも中国が受け手であることで語られている。中国自身が対外ODAを行っていないのだろうか。世界第2位の経済大国として、大いに貢献してもよさそうだ・・・。

 しかし、中国のお名前が見当たらない。2014年12月公表のODA拠出額国別ランキングを見ると、アメリカが1位、以下英・EU・独・日本へと続き、30位には国家財政破たん危機に瀕するギリシャまで顔を出し、以下ルーマニアやエストニア、ラトビアといった小国が勢ぞろいだが、中国は一向に現れない。

 中国はODAをやらないのか。素朴な疑問をもってしまう。いや、実は中国は対外援助の「老舗」である。周恩来首相が 1964 年に発表した「対外援助 8 原則」(平等互恵、内政不干渉など)を根拠に、中国は主に対アフリカの援助を続けてきた。では、なぜ通常のODAリストに掲載されていないのか、中国がやっている経済援助とODAの概念とは本質の差異があるからであろう。

 最大な差異はどこかというと、やはり援助受け入れ国に対する政策条件ではないだろうか。ODAはガバナンスを重視するが、中国は「内政不干渉」原則で政策条件を基本的に設けていない。「不干渉」であれば、援助受け入れ国が独裁政権であろうと圧政であろうと関係がないことになる。「不干渉」という不作為は意図的なものであるかどうかは、傍観者各位の判断に任せたいところだ。

 いわゆる基本的な概念部分で、中国の対外援助がODAの枠組みからはみ出ていることから、ODAデータ集計から外れるのも当然といえよう。このへんの話、これまであまり議論の対象にならなかったが、ついにアジア投銀(AIIB)の発足で世界の関心事として浮上した。

 中国ルール対ODAルール、どちらが最終的に世界の主流になろうか。本質的には、原理原則と価値観の選好でもあり、また経済的利益との均衡作業でもあるから、展開を静観したい。