政治家の夢とコンサルタントの現実、奇人変人の世界

 政治家になろう。過去の人生にそう考えた時期があった。

 会社を変えられたとしても、社会を変えられるかとなると、基本原理が同じであっても置かれる状況はかなり違ってくる。有名な経営コンサルタントが選挙に立候補して落選する事例もあるが、心情はよく分かる。ただ現実は厳しい。

 経営コンサルタントは合理性を考え、利益集団の最適化に取り組む。その対象となる利益集団が企業であれば、経営者が最終的決断を行う。国となればまるっきり勝手が違う。合理性よりも最終的に多数民意が意思決定をする(独裁国家は違うが)。

 一時期政治家への道も考えた私は、「寿命を縮める方法を考えているんですか、それにあなたの性格とやり方じゃまず当選も無理ですよ」と妻に言われた。水を差されたことで一度原点に戻って冷静に考えると、妻が正しかった。私は、政治家の夢を素気なく諦め、従来通り自己変革や顧客企業の変革に取り組み続けることにした。

 人にもそういう。「社会が悪くても、会社が悪くてもそれが変えられないと判断した場合、自分を変えた方が手っ取り早い」(その辺、否定されてもまったく反論するつもりがない)。自己変革というのはある意味での自己否定だ。人に自己否定を勧めるのはいかにも唐突で失礼なことか。自分が認める「正義」を否定することにもなるからだ。そのへん「ばかやろ」と罵られることもしばしば。特に企業研修では経営幹部に自己変革を促したところで、激しく反論されたこともあった。ただそのほとんどが当初にとどまり、シリーズ研修の中盤あたりからアレルギー症状が緩和し、終盤に差し掛かった時点で完全に状況が一変してしまうほどであった。

 顧客レポートやコンサル現場に関しても同じだ。問題抽出や批判には基本的に、何らか提案や実務の解決策が伴う形にしている。ただ、ブログやフェイスブックは性質上有料レポートと一線を画す必要があるので、境界線のところでばさっと切ったりすることがある。前半や冒頭部分だけをブログなどで公開して、後半をつけたフルバージョンを顧客レポートに掲載したりする。そこで公開投稿の方、見方によってはいささか不完全燃焼気味になってしまうこともある。

 とはいっても、価値観が多様化する時代であって、私の観点や価値観に賛同しない方もいることだろう。そこで、「あ、立花はそういう考えの持ち主なんですね、この人には仕事を頼めません」と私が仕事の機会、潜在顧客を失ったり、「立花の投稿を見ても仕方ありません」とブログ読者が離れたりすることもあろう。

 ブログのアクセス数で広告収入を得ているわけではないので読者離れはまだしも、仕事の依頼を失うのが正直痛い。万人受けの文章で八方美人になることも一案だが、なかなか人間の本音が隠せないもので(特に私は下手なので)、ついつい馬脚を現す。だったら最初から偽装しない方がいいと思った。

 顧客とコンサルタント、読者と書き手は相互選択の関係にある。特に費用が伴うコンサルティング、経営者とコンサルタントの相性がとても重要でそれが仕事の成敗をも左右する。そこでコンサルタントの人物像や理念、信条といった基本情報をいろんなチャンネルを通して隠さずに開示する、というのが私の方針だ。

 そんなところで、「鉄人コンサルタント」とか読者に言われると、とんでもない。むしろ、「奇人変人」と言われた方がうれしい。

コメント: 政治家の夢とコンサルタントの現実、奇人変人の世界

  1. 以前にある人が立花先生を二つの文化の高度なレベルでの融合を成し遂げた人物だと表現したことがありました。

    立花先生はそれだけでなく、ロジックと現実の点でもまた、高度なレベルで融合なさっていると思います。

    「奇人変人」とも言えるが、コンサルタントとしてご成功になれるほどには正常であり、そのご成功度を考えると「奇人変人」であっても自称できる程度のギリギリのレベル。

    だから、「奇人変人」レベルとしては決して高くないが、世間から評価を受けられる「奇人変人」レベルとしては最高位とも言えます。

    鉄人というと語弊があるようですが、世の中であまり見かけることのできない稀有な人であるのは間違いないと思います。これからもドシドシ本音で語ってくださると嬉しいです。

    1. 貝塚さん、褒められて率直に嬉しい、その気持ちを感じた時、まだ「正常」の範疇で「奇人変人」までもう一歩努力が必要ではないかと、そう思いました。「鉄人」に関しても嬉しいのですが、ただ一旦溶かさないと改造できないので、「自己改造」にコストがかかりすぎ、負担もあります。そこで辞退させていただきました。実際のところ、賛否両論です(当たり前でしょうが)。私に対して拒絶反応を示された経営者も少なからずおられます。契約を切られた事案もありました。その辺はどうでもいいのですが、本音で語ることだけはコミットします。

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