「オフショア居住」のマレーシア、使い方は人それぞれ・・・

 「オフショア居住」という言葉、聞いたことありますか。ないでしょうね。私が作った造語である。

 一見矛盾であるかのように見える――「非居住者的な居住」。居住者は課税される。節税するために非居住者のメリットをオフショアで享受する。つまり、居住行為が課税を招く中核的な課税要素である。

 といっても人間は必ず地球上のどこかに住まなければならない。居住行為は避けられないものである。そこで居住行為に対し課税しない国が存在するかどうか、さらにその国に住めるかどうかという命題にたどり着く。

 その答えは、マレーシアである。「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)」というビザは、「退職者ビザ」とも言われるが、実は非退職者も取得できるビザである。いや、どちらかというと、退職者で取れなくなってしまう可能性(年金だけの収入では条件をクリアできない恐れがある)があるから、現役取得が望ましい。

 そもそも「セカンドホーム」という概念は強制要素が一切かかっていない。「ファーストホーム」にすれば、まさに「オフショア居住」になる。マレーシア本土で給与取得が禁止されている以外、海外所得をマレーシアに持ち込んでも原則課税されない。退職後の所得まで、日本人の年金は日本国内で雑所得として課税されるが、マレーシアでは非課税。まさに「オフショア居住」のメリットの一つである。

 さらに面白いことがある。マレーシアの連邦直轄領でラブアン (Labuan) という街がある。サバ州の沖合い南シナ海に浮かぶ島であるが、それがマレーシアのオフショア金融センター(LOFSA) ないし租税回避地としていま東南アジアや中東から注目を浴びている。ある意味で「オフショア居住者」にとってみれば、「オフショアのオフショア」になり得る場所である・・・。

 MM2Hビザといえば、日本人の取得者数がずっとトップだった。特に大震災後の2012年に一気に倍増してピークに達したが、それが2013年を境に続落し、ついにトップの座を中国に譲り渡した。2014年、中国人のMM2H取得者数がなんと日本人の3倍以上に達した――。

 2012年 中国人 731名 日本人816名
 2013年 中国人1337名 日本人739名 
 2014年 中国人1307名 日本人428名

 だから何だ。これに答えを出す立場には私はない。むしろ、人それぞれの数字の読み方があるのだから、それはそれでいい。無論、「オフショア居住」のマレーシア、その活用法も人それぞれ・・・。

コメント: 「オフショア居住」のマレーシア、使い方は人それぞれ・・・

  1. 「動態的ステータスに何となく疲弊感」。驚きました。立花先生のような行動的な方が、動的ステータスに疲弊感を感じ、静態的な「オフショア居住」に安心(?)を感じられるとは。

    私などは、動態的ステータスに自由と勢いを感じるのですが、人によって受ける感じが異なるものですね。

    おっしゃる通り、節税防止対策の国際協力はなかなか進まないんでしょうね。TEDなどでは活動家たちば実績をアピールしているようですが、多国籍企業側の資金力でロビー活動されるとなかなか難しいのかもしれません。そうであれば、PTもしばらくは安泰でしょうか。

  2.  「オフショア居住」。面白い造語ですね。PT(パーペチュアル・トラベラー)と少し似ていますね。PTでもタックスヘブンに自宅を持っている場合があるというこから、「オフショア居住」との違いは、程度の問題になるのでしょうか。

    タックスヘブンを利用した節税行為に対して各国が少しずつ包囲網を狭めていることから考えるとPTも将来的には絡めとられていくのだろうと思いますが、我々の世代の間に包囲網が完成することはないでしょうね。

    1.  「パーペチュアル・トラベラー」の動態的ステータスに何となく疲弊感が出やすく、もう少し静態的な「オフショア居住」にしようと考えました。感覚的な問題かもしれませんが・・・。節税対策の国際間協力はそう簡単に進みません。各国は結果的に立法権と司法権を持っている以上、国益優先でしょうね。

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