アラブの旅(14)~2つの顔、スーク・シャークの魚市場で築地を思う

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 長い中東湾岸諸国の旅は、1月9日で終わった。補遺というよりも、メインテーマの多くが取り残された状態だ。ビジネス関連、顧客レポート用等の有料コンテンツを除いて、その一部を遡及して取り上げたい。

 まずはクウェート。クウェートの食に関してほとんど情報がない。こうなったら行ってみるしかない。視察途中で適当に店を見つけて食べることにした。

アラビアン・ガルフ・ストリートを散歩中

 クウェート湾の青い海を眺めながら、アラビアン・ガルフ・ストリートを散歩していると、視察先のスーク・シャークが見えてくる。スーク・シャーク(Souk Sharq)とは、築地と銀座が1つにコンパクトにまとめられたような場所で、魚市場と高級モールの合体エリアである。

スーク・シャークの正面入口

 「スーク」とはアラビア語で「市場」を意味し、キャラバン(隊商)の通る街外れに定期的に立つ交易の市に由来する。それを現代風のショッピング・モールに当てはめるには少々違和感を抱く。ただこのスーク・シャークでは、従来の魚市場が別棟として保存・併設されているのは面白い。

スーク・シャークに併設された魚市場

 清潔なマーケットだ。たくさんの魚が売られている。なかに名も知らないような魚もある。好奇心に釣られてついつい買ってみたくなるが、旅行者として持ち帰って調理できないのが残念の極みだ。

 築地はなぜ移設が必要だったのか。私が思うにはむしろ築地と銀座のさらなる一体化が望ましいと。築地は築地だからこそ、日本のかけがえのない文化財であって、観光資源である。歴史の年月で積上げた無形資産とは、その場所に漂う空気も一体化されたものだ。スーク・シャークと同じモデルでなくとも、日本らしい模索の余地はなかっただろうか・・・。

スーク・シャークのモール

 高級ショッピング・モールの方のスーク・シャークは、どこにでもあるような近代的なモールだ。世界の有名ブランドやフランチャイズ店の顔ぶれは万国共通だが、ただアラビア語の文字だけが私にとって新奇だった。

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