夢もなく恐れもなく、冷徹な現実主義者の信条と美学

 「Nec spe nec metu」(夢もなく、恐れもなく)。イタリア・ルネサンス期の女性政治家、マントヴァ侯爵夫人イサベラ・デステのモットーである。

 夢を持たない、現実主義者の私にとって、深く共鳴するものであった。

 夢がなければ、失望もない。失望がなければ、絶望もない。絶望がなければ、恐怖もない。と、私の信条である。夢を善とする現今の日本では、マイノリティーどころか異端的な存在であろう。

 甘美な夢を追いかければ、必ず挫折するときがある。その挫折の苦痛を恐れ、様々な行動を躊躇ってしまう。そのうち、夢は夢で終わる。すると、「夢は実現するのではなく、実現するための過程に意義がある」と解釈する。私はいささかそれにある種の自己欺瞞を感じずにいられない。

 故に、私は夢を持たない。挫折があって当たり前、うまく行ったら幸運。たくさんうまく行って成功した場合、その成功は夢の実現ではなく、歴史の製作に過ぎない。

 冷徹な現実主義者として、醜との付き合いを自らの美学とし、逆説的な論理に生きる。そんな私の心に響く一字一句であった――「夢もなく、恐れもなく」

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