ペナン食い倒れ日記(15)~福建蝦麺、天国到達の至福感を味わう

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 第8ラウンド。ペナン食い倒れツアー4日目、8月15日(水)の夜は、プレスグレーブ・ホーカー(Presgrave Hawker Centre)に転戦する。

 前半戦はあの「三条路888」。ターゲットは言うまでもなくストリートフード(屋台食)の代表格、「福建蝦麺」(ホッケン・プラウン・ミー)。ペナンに来たら、これを食べずには帰れない。

 決め手はスープ。剥いた蝦の殻と頭を、レッドオニオンや生姜などの香辛料と一緒に熱い油で炒め、唐辛子を入れ臭みを取ったところ、豚骨やヒカマと一緒にコツコツと煮込み、独自の濃厚なスープを作り上げる。

 食べ方は、「全麺」(すべて麺)、「全粉」(すべてビーフン)、あるいは「半麺半粉」(麺とビーフン半分ずつのミックス)が選べる。現地の客に見習って私は半麺半粉にする。細いビーフンはスープの味をよく吸い込んでくれる一方、麺は主にコシを楽しむという見事な役割分担だ。味と食感の両方を同時に楽しめる。

 そこで次は辛さの調整。これはサンバル辛味噌のさじ加減で行う。私は辛党なのでたっぷり入れる。するとスープは辛さだけでなく、クリーミーな濃厚さも一気に増幅され、味覚系統、嗅覚系統、視覚系統、全神経系統がただひたすらに脳に「至福感」を送り続けるのみだ。

 心地よい港町の微風に吹かれ、トロピカルな夕暮れを見上げると、不意にも天国の入口に到達したかのような錯覚に包まれる。いかに甘美な感覚であろう。「いまこのいまに死んでもいい」と思った瞬間、それは比類なき最上の至福の瞬間である。

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