ペナン食い倒れ日記(16)~オイスターフライ考察、比較食文化目線

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 第8ラウンドの中盤戦は、プレスグレーブ・ホーカー構内の移動で、蠔煎(オイスターフライ)のブース前のテーブルを陣取る。

 これに似て、蚵仔煎(オアチェン)という台湾の代表的な小吃がある。牡蠣入りのオムレツである。台湾版は、鉄板の上で油を熱した後、小粒の牡蠣と鶏卵を炒め、白菜または春菊を入れ澱粉水で綴じ、上から甘辛いたれをたっぷりとかける、というようなものだが、ここマレーシア版はやや違う調理法を取っていた――。

 まずはやや大粒の牡蠣が使われている。それから多様な具材を入れることも甘辛たれをかけることもなく、単純に卵炒めで仕上げる。オムレツではなく、シンプルな牡蠣と卵の炒め物にすぎない。いや、逆にそれが私の好みにぴったり合うのだ。大粒の牡蠣も食感が素晴らしいし、個人的には甘辛たれよりも、醤油と唐辛子(輪切りチリ)のほうがより有難い。

 料理のルーツとしてはやはり潮州系になるが、その独自の地味さには惹かれずにいられない。潮州料理は高級素材を使った、目玉が飛び出るほど高価な料理もあれば、シンプルな調理法を用いる安価な庶民料理もある。私の最愛である潮州粥(テオチュー・ポーリッジ )の副菜としてもこのオイスターフライがベストマッチになる。どんな酷い二日酔いも吹っ飛びそうだ。

 卵が出れば、どうしても朝食を連想する。ベトナムの朝食、バインミー(バケット)もこのオイスターフライを具材として使ったら、きっと最高の味になるだろう。アジアは基本的に、1つの包括的な食文化圏として考えた場合、諸国・地域の食文化やルーツを見ても、互換性によって大きなポテンシャルがあるように思えてならない。

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