塩野七生氏の本を読む、社会の原点へのアクセス

 30代の私は歴史に興味がなかった。40代になって興味を持ち始めたのも塩野七生氏の本だった。小説でもない歴史書でもないあの独自の体裁に惹かれた。チェーザレ・ボルジアあたりは徹夜して一気読みしてしまったほどハマった。

 地中海は人類史の中心だっただけに何というか、哲学や宗教、政治といった社会の中核部分が凝集されているようなものだ。ギリシャやトルコを旅し、イタリアは何度も足を踏み入れて見てきたが、もう数週間の旅行で知り得るようなものではないと痛感した。

 生涯を「地中海史」に捧げた塩野氏の著作、あの重厚感に触れた時点で痺れてしまう。そして、本質へのアセクスを鮮明に提供してくれたところ、氏の並々ならぬ力を感じずにいられない。世の中、難しいことを簡単に伝えるほど難しいことはないからだ。

 本って、本当に素晴らしい。

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