恒例の番外編だ。イポーからお土産として買ってきた名物の塩鶏(中国語「塩焗鶏」)を自宅で加熱して食べる。中国語「塩焗鶏」の「焗」という漢字は、通常「蒸し焼き」に訳されているが、必ずしも適切とはいえない。少なくとも100%うまく表現できているとは思えない。
以前のブログ記事、「イポー塩釜チキン、自然体極上美味の至福」でも紹介したことがあったが、参考してほしい。特に客家料理によく見られるが、蒸気を媒介として、出汁や塩漬けされた半熟の食材(「塩焗鶏」の場合、塩漬け)を加熱して仕上げる調理法だ。
塩と熱。もっともシンプルな調理法から出来上がったこの一品は、とにかく食材、鶏の持ち味が勝負。鶏の皮下には余分な脂肪がないことに驚く。加熱しても脂がボタボタ落ちないし、肉の臭いもまったくない。皮は綺麗に焼き上がり、身離れがよい。程よく引き締まった肉はパサパサせず、歯ごたえが抜群に良い。
マレーシア産のカンポンチキンはやはり素晴らしい。これだけ良い素材だと、いろいろ手を加えて調理するのがもったいない。むしろ、このようなシンプルな調理法がもっとも適しているといえる。
シンプルといっても、業者独自の秘方たるものがあるだろう。独自の風味を出していくための配合やノウハウ、技能はなかなか外部に漏れることはない。観察したところ、当帰と思われる漢方薬のスライスが出てきたりして、漢方やハーブを配合して鶏に詰めていることだけは分かる。
自宅で食べるイポー塩鶏
お酒も入っているだろう。そこで混合された独特の香りは神秘に満ちている。加熱によって染み出た汁をスプーンですくって飲むと、なんともいえない複雑な刺激によって未体験の脊髄反射が起こる。
また、イポーへ行きたくなった。