サパの旅(5)~夜霧よ今夜も有難迷惑、霧の街サパ

<前回>

 サパの街は標高1600メートル。天候が大変不安定。いま晴れたと思いきや、お天気雨が降ってきたり、そのあとは霧に覆われたり、まったく予測不能である。

夜霧に包まれるサパの街

 滞在中に毎日、霧に閉ざされる時間がもっとも長い。初日は特にひどい。朝はまだ晴れていたが、正午過ぎると霧が四方八方から湧いてき始める。視界は10メートルくらいしかない。夜になっても一向に消えない。

 この霧は、なぜか変な匂いがする。私の嗅覚の問題かもしれないが、匂いだけでなく、粒子の存在も感じてしまうほどである。国境地帯故に、中国からやってきた汚染のせいなのか。定かではないが、あまり快適ではない。

 そういえば、サパに限らず、ハノイをはじめとするベトナム北部はなぜかぐずついた天気が多い。グリーンイノベーション研究開発センターの報告によると、2017年のハノイにおける年間平均大気汚染は、世界保健機関(WHO)の大気質ガイドラインで容認される数値より4倍も高かったという。

 経済発展の代償は痛々しい。国土が中国よりもはるかに小さいこのベトナムは今後どこまで環境悪化の圧力に耐えられるのか、懸念せずにいられない。ここ北部の山岳保養地は着々と観光開発が進んでいる。それ自体も立派な環境破壊である。これから5年後、10年後ないし20年後のサパはどんな街になっていくのだろうか。

 赤道直下の太陽と青空に慣れ親しんだ私は、異郷の地、霧の街サパで絶えず疎外感を抱き続け、まるで「ET go home」を呟く外惑星人のように、ホームシックの郷愁に包まれている。

<次回>