犬・警察・法律

 「お宅の犬、許可書降りたから、早く取りに来い」、電話がガチャンと切られる。

 無愛想な声は、公安だった。犬を飼うための許可証がようやく降りた、行政手数料は年間2000元。そして、上海市内、現在8割の犬が無許可状態・・・

25564_2犬の許可書一式、これで2000元なり

 法を守る人から金を取る。ハードルを高く設定しておいて、必ず、大量な違法者が出る。すると、いつ取り締まりをやっても、摘発率はさぞ高いだろう。そこで、罰金を取る。中国の行政ほど良い商売はない(日本の行政もそれほど素晴らしいものではないが、もう少し愛想が良いけれど・・・)。

 考えると、私が仕事で毎日のように、接している「労働契約法」も同じだ。ハードルをとても高く設定している。遵法のことしか頭にない日本企業には、重いコストがのしかかる。一方、労働者を搾取する企業は一向に減らない。このような違法企業は、そもそも法律なんか見向きもしないし、どうでも良いのだ。

25564_3パソコンの前を陣取る我が愛犬のゴン太くん

 違法者は、摘発されると、処罰を受ける、そこでいわゆる「違法コスト」が発生する。ところが、摘発率は何パーセントか、そして、摘発されても地方の役人に「好処」をやれば処罰は軽減されたり、免除されたりすることも珍しくないだろう。あるいは日常的に「好処」をやっていれば、問題はそもそも発生しない。この一連のプロセスに発生するのは、「違法コスト」だ。

 この「違法コスト」と「遵法コスト」を天秤にかけると、中国の場合、しばしば「遵法コスト」が高くなったりする、しかも、はるかに高いこともたくさんある。「善」のコストが「悪」のコストより高い、「悪」の利益が「善」の利益より高い、これじゃ、おかしくなるのが当然だ。

 官僚役人の不正が絶えない。法治社会がいつまでもできない。その根本的な問題はここにあるのだ。

 遵法者が損するような体制が是正されなければ、情況の好転はありえないだろう。