問題解決は、「まず解決すべき問題に取り組む」方法と「まずやりやすい問題に取り組む」方法という2つのパターンがある。トランプは前者、バイデンは後者。
ロシアも中国も西方諸国にとって問題である。だか、どっちから着手すべきかが重要だった。問題解決にあたって、まず重要度と緊急度マトリックスにマッピングし、優先順位を決めるのが先決だ。
すると、一目瞭然、中国は重要度も緊急度も+5+5だとすれば、ロシアはせいぜい+3+2、さらに中東は+1+1あたりではないかと。そこでトランプの戦略は非常に明確だった。中東からはまず引き揚げ、ロシアとまあまあ友好関係を維持しながらも、全ての資源を対中の戦いに集中投入する。
まったく正しい判断と行動であった。
残念ながらも、トランプは対中戦の道半ばで「失脚」した。バイデンが登場するや、優先順位をひっくり返した。彼自身一族の中国との関係はさておきながら、対中戦と対ロ戦の難易度をみても、一目瞭然。
中国との貿易戦争は中国だけが敵ではない。米国や西方諸国の経済産業界全体を丸ごと敵に回すようなものだった(だから、トランプが「失脚」させられたわけだ)。みんな中国利権をもっているからだ。ウクライナ開戦後の対ロ制裁はSWIFTも含めてあっさりと通ったが、対中の経済制裁をやってみたらいい。サプライチェーンが寸断すれば、生活が狂ってしまう西方諸国の有権者が一気に怒りを政治家にぶつけるから、できるはずがない。
ロシア制裁は、欧州のエネルギー供給(これも解決できない問題ではない)以外に、日本あたりの小麦粉や水産品の値が上がっても、即時の死活問題にはならない。2021年のロシアのGDPは世界11位、中国のわずか10分の1しかなく、韓国よりも少ない。
ロシアは「経済小国」であるが故に、経済制裁に耐えられない。そうかもしれないが、プーチンを追い詰めてはいけないのは、核をもっているのもあるが、もっともロシア潰しは中国を利するだけであるからだ。
元々米国は大国ソ連と戦うために、中国を利用した。結局のところ、ソ連は自壊したものの、中国が逆転して強者の座を手中にした。そこでどうしても言うなら、今こそロシアを利用して中国と戦うべきだが、なぜかロシア叩きモードにバイデンが走った。
中国にとっては漁夫の利。ウクライナがロシアに負けても、ロシアが最終的に米欧に潰されても、中国は得をする。特に追い詰められたプーチンが狂気の沙汰で核のボタンに手を出した場合、それこそ第三次世界大戦が勃発する。欧州大陸ないし米本土の混乱に乗じ、どさくさに紛れて中国は台湾を手中にすることが可能になる。
それだけではない、ロシアが敗戦すれば、中国はウラジオストク(中国名:海参崴)を取り返すことができるかもしれない。そうなれば、大中華帝国の復活によって、習近平は近代史上最強の帝王として歴史に名を遺すことになる。
日本、日本人はどうなるか。皆さんの想像に任せよう。