ロシア制裁できても中国制裁は?多国籍企業の苦境

 ロシアのウクライナ侵攻後、米国の制裁政策に合わせて大手多国籍企業は相次いでロシア・ボイコットに踏み切った。言ってみれば、ロシア市場が小さいのでボイコットは簡単だが、中国となれば、どうするのか?

 ロシア制裁。アップルやマイクロソフト、ディズニーなどの大手企業も追随している。例えば、アップルの場合。ロシア市場での2021年の収益は約50億ドル、全体の1.4%を占めている。一方、中華圏の2021年の収益は684億ドルに上り、全体の19%も占めている。

 ボイコットは、西側世界の倫理観に基づき、「政治的な経済行動」である。ただ経済的規模(一定の規模を超えれば)は決定的な影響を及ぼしている。

 タフツ大学フレッチャー・スクール・オブ・グローバル・ビジネスのグローバルビジネス学科長、バスカー・チャクラヴォルティ氏はこう指摘する。「多国籍企業にとっては罠だ。これらの企業は20年以上にわたって何十億ドルもかけて複雑なグローバルネットワークを構築してきた。地政学的な紛争や人権侵害を背景に持つ国々に進出した場合、彼らは政治的な判断だけでなく経済的な判断もしなければならない」

 つまりは、政治を取るか経済を取るかの選択だ。初期投資の回収収益確保という2大課題が横たわっている。

 中国はこれからどうなるか。どうか「あまりひどいこと」をやらないよう祈るしかない。ロシアとの運命共同体の結成、台湾侵攻など、不確定要素があまりにも多い。

 ロシア制裁同様の対中制裁が実施されれば、グローバル経済には死刑宣告のようなものだ。民主主義国家には不可能である。政治に対する牽制は経済産業界からだけではない。グローバル・サプライチェーンの寸断から国民生活に与えられ得る打撃が拡大すれば、民主主義国家の政権は倒壊する。

 中国はこの文脈が読めた時点で、より大胆な挙動に出るかもしれない。

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