スリランカ日記(7)~桃源郷への道

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 12月29日、標高500メートルほどのキャンディの街を後にし、車がスピードを落としながら、山道を登り始めた。目指すは標高1800メートルのヌワラ・エリヤ(Nuwara Eliya)。

 キャンディがスリランカの京都だとすれば、ヌワラ・エリヤはスリランカの軽井沢になる。スリランカ屈指の紅茶産地であると同時に、「リトル・イングランド」と呼ばれる英領時代からの避暑地としても名高い。

31690_2茶畑風景

 キャンディを離れて1時間も経たないうちに、温度が急降下し始めた。ヌワラ・エリヤは標高1800メートルの場所にあり、スリランカの紅茶産地の中でももっとも高いところに位置するハイ・グロウン(高地産紅茶)である。日中の気温は20℃、朝夕は5から15℃と過ごしやすい。昼夜の温度差が激しい気候は、ハイ・グロウン特有のもので、気温の違いが紅茶の栽培にも大きく関係する。温度差が大きいと、渋み成分のタンニンと甘みを作るテアニンがバランスよく含まれたお茶が育つという。

31690_3ヌワラ・エリヤ~桃源郷のような風景

 キャンディからヌワラ・エリヤへ向かう山道は、様々な美しい景色が集約されている。車窓外の景色は、熱帯の草木から徐々に柔らかで落ち着いた緑の丘へ変化する。絵のような美しい山並みに、所々山間の岩を縫うように滝が落下する。道端には高山植物や名も知らない鮮やかな小花が旅人に微笑む。

 車内のエアコンを消し、車窓を全開すると、甘露のような湿気と清涼な空気がすーっと車内に流れ込む。太陽は一段と明るさを増しながらも、優しく大地を撫で、無限の平和を与えてくれる。

31690_4午後の紅茶、本場スリランカのヌワラ・エリヤにて

 桃源郷へ向かう道だ。ここ、スリランカ、あのセイロン紅茶の生まれ故郷なのだ。

 昼下がりの一服は、いうまでもなく、紅茶のティータイムだ。場所は、ティー工場のカフェ。産地直送といっても、産地のど真ん中でいただく紅茶の香りと味は格別だ。ここ、ヌワラ・エリヤというスリランカ一標高の高い土地で生産されるハイ・グロウン(高地産紅茶)は、「セイロン・ティーのシャンパン」と呼ばれている。澄んだ水色で、芳香が強く、緑茶によく似た渋みでなんとも言えない爽快感が引き立てられ、大人の紅茶だ。もちろん、ストレートでいただく。

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