スリランカ日記(8)~紅茶談義その一、午後の紅茶

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 セイロン紅茶という名称は、日本人にも馴染み深い。セイロンとは、スリランカの旧国名。スリランカは、世界で最も知られる紅茶生産国の一つである。

 紅茶といえば、どうしても、英国を連想する。私は、英国へは2度旅したことがある。毎回必ずホテルのラウンジや街のカフェで紅茶をいただく。いわゆるアフタヌーンティー(Afternoon Tea)だ。アフタヌーンティーは英国発祥の喫茶習慣だ。紅茶と共にサンドイッチなどの軽食や、スコーン、ケーキ類といった菓子を取る習慣であるが、単に飲食を楽しむだけのものではなく、社交の場として使われていた。そのため、日本の茶道のように、作法、室内装飾、食器、花、会話などの高度な知識が要求される。アフタヌーンティーは、ホテルなどでは皿に盛った軽食・菓子が2~3段重ねのティースタンドに載せられ、供される。

31709_2リッツ・ロンドンのアフタヌーンティー(同ホテルウェブサイト写真)

 以下は、名門ホテル、ザ・リッツ・ロンドンが出すアフタヌーンティーのメニュー例(同ホテルウェブサイトから抄訳)である。

ザ・リッツ・ロンドン(パームコート)のアフタヌーンティー セットメニュー
(1人前 56英ポンド(8300円))

スモークサーモン・サンドイッチ
ハム・サンドイッチ
チキン・サンドイッチ
胡瓜サンドイッチ
チェダーチーズ・サンドイッチ
卵マヨネーズとクレソンのブリッジロール
自家製・出来立て熱々のレーズンとアップルスコーンのクリームとイチゴジャム添え
リッツ特製チョコレートケーキ
紅茶
グラスシャンパン

31709_3ヌワラ・エリヤにて、バックには今回満室で泊まれなかった英国式のグランドホテル

 日本人がよく混同するが、アフタヌーンティーによく似たハイティー(High Tea)がある。アフタヌーンティーが英国の上流階級に起源したものに対し、ハイティーはアフタヌーンティーの影響を受け、労働者階級・農民から始まったものである。そのため、上流階級の人間は自分たちのティー・タイムを絶対にハイティーと呼ばない。ハイティーは夕方の一服として供されるが、事実上の夕食でもある。紅茶やサンドイッチなど軽食や菓子類のみならず、肉料理や魚料理も供され、時には肉や魚料理の方がメインとなったりすることもある。

31709_4シンガポール・マンダリン・オリエンタルホテルのハイティー(2005年4月撮影)

 ハイティーといえば、シンガポールが有名だ。私が2005年シンガポールを旅したとき、ハイティーの代表格であるマンダリン・オリエンタルホテルでハイティーをいただいた。英国の元植民地であり、広東系華人・華僑の多いシンガポールでは、そのハイティーは、英国風に紅茶、スコーン、サンドイッチが供されるほか、シュウマイや餃子など中華料理の点心も供され、英国式にアレンジされた飲茶(ヤムチャ)とも、中華風にアレンジされたハイティーともいえる。

 アフタヌーンティーだろうと、ハイティーだろうと、いずれも紅茶が一種の主役を演じている。しかも、時間帯的には午後であり、そのためか、日本では、「午後の紅茶」という商品まで開発されたのだろう。

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