<上海>四川料理・天府楼、伊勢海老は唐辛子と匠の技で踊る

32446_1四川料理・天府楼 (上海ヒルトンホテル ウェブサイト写真)

 会社に近いことから、会食などでよく使う上海ヒルトンホテル。39階にある四川料理は上海屈指のレベルといえる。唐王朝風の馬の石像や刺繍入りの清王朝時代のローブで美しく飾られた店内は、いかにも中国式の「雅」を感じさせ、心を豊かにしてくれる。

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32446b_2活伊勢海老の四川風ピリピリ炒め

 味も素晴らしい。先日、夕食を食べに行ったら、伊勢海老を勧めてくれたので、注文した。四川料理といえば、内陸系で肉中心だが、その料理法は海鮮料理にも多く生かされている。

 しかし、いくらなんでも伊勢海老は淡白で、旨みが詰まっている。通常刺身、ゆでる、蒸す、グリル加熱、または直火焼きで食べる。あまり刺激のある料理法で、淡白な風味が壊れ、旨みが逃げたり、または調味料に圧倒されたりすると、最悪だ。

 唯一、今まで食べてまあ、良かったかなというのは、香港のハッピーバレーにある「竹園海鮮飯店」の芝士牛油焗龍蝦(イセエビのバターチーズ風味ソースがけ)だった。バターチーズ系統は意外に合っているが、伊勢海老自身の旨みが濃厚な味と香りに圧倒されてしまうきらいがある。とりあえず合格点だが、感動ものではない。

 そこで、四川風の唐辛子炒めとなると、心配せずにいられない。とりあえず、挑戦。

 待つこと20分、いままでの生きていた暗紅色の活伊勢海老が、真っ赤に変身して運ばれてきた。「ごめんなさい、有難く頂戴します」、命を頂く感謝を込めて箸をつける。

32446_3伊勢海老粥
32446b_3樟茶鴨

 唐辛子の「辣」(辛さ)と花椒の「麻」(痺れ感)が合体になって、ピンポイントのピリピリ感を織り成している。伊勢海老の身に歯を立てると、すべるほどの滑らかさで心が躍る。まるで果実を噛むような歯ごたえで、プリッと身に切り込む。潮の香りがふわぁ~と鼻腔へ立ち昇る。コリコリ、プリプリ、ピリピリ、均等に異質なものがいくつも共存している。互いに戦っていなければ、どれがどれを圧倒しているわけでもない。なんとも言えぬ絶妙な食感と味だ。

 素晴らしい。伊勢海老の四川風ピリピリ炒め。対立する味だが、逆にコントラスト感を持たせることで、互いに引立て合うという絶妙な境地を作り出す。だが、そのコントラスト比が一歩でも間違ったら、伊勢海老は台無しになる。バランス取りは、匠の技だ。

 そして、伊勢海老の頭と足はお粥にする。料理がすべて出揃ったところ、「伊勢海老粥」が運ばれてくる。濃厚な風味はもう言うことなし・・・

32446_4四川料理の食後、「上海シガー倶楽部」定例会でキューバ人ローラーと

 伊勢海老のほか、当日のもう一品の目玉料理は、樟茶鴨(ジャンチャーヤー)だ。アヒルの四川風、燻し揚げ。これも四川料理の宴会で供される有名なクラシック料理だ。四川地方の水田や水路で放し飼いにされているアヒルを使った料理で、ユニークなのはその調理法。クスノキ「樟」とジャスミン茶「茶」、そして「燻す」。皮が燻製の薫りの受け皿となり、食欲をそそる。程よい塩気が利いて、ピリリと舌がしびれるような花椒の風味で、酒が進む。それも、紹興酒よりも、丸みを帯びない、若干荒々しい若いタンニンの強い赤ワインが良い。本日のテーブルワインは、南オーストラリア産のシラーズだが、フルボディで香味が強く、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べると、タンニンはダントツ自己主張が強くて四川料理にベストマッチだ。

 素晴らしい夕食だった。食後は、定例の「上海シガー倶楽部」会合。同じヒルトンホテル1階のシガーバー、本日もキューバ人ローラーが来ていて、実演販売していた。

★四川料理・天府楼
<住所>   上海市華山路250号 上海希爾頓酒店(上海ヒルトンホテル)39階
<電話>   021-6248-0000
<営業>   18:00~22:30(毎日) 11:30~14:00(月~金)
<予算>   300元~800元/人