流氷紀行(5)~立花流の温泉の楽しみ方

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 摩周湖を見て、昼下がりの雪道を走り、温泉宿へと急ぐ。まだ、時間は午後の2時過ぎ。とにかく、私は早く宿にチェックインしたい。理由がある。夕方混み合う前にゆっくりと温泉に入りたいのだ。

33565_1和の寛ぎ

 今夜の宿は、摩周湖から車30分足らずの川湯温泉の川湯第一ホテル 忍冬(すいかずら)。昼食を取る時間がなく、宿近辺のセイコーマートでおにぎりを買って車内で昼食を軽く済ませることにした。というのも、夜に備えて胃袋に十分なスペースを空けておかなければならないのである。

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33565b_2川湯第一ホテル忍冬の客室

 14時50分、宿にチェックイン。まだ、客は誰もいない。

 15時15分、温泉に入る。露天風呂を独り占め。

 16時30分、風呂上りに冷たい水を飲みながら、続々と大浴場に入ってくる客を眺めて優越感に浸かる。

 17時、部屋に戻り、畳の上で昼寝。これは最高の贅沢なのだ。

 18時30分、目覚める。腹も減ってきたことだし、準備万端だ。

 リンリン・・・、蘇州の顧客から私の日本国内携帯に電話がかかった。プロジェクトの着手が決まり、早急に見積もりの確定と契約書の送付をしてほしいとの連絡。昨年後半からは、大型案件の受注が急ピッチで増えている。量よりも質重視であれば、受注総量制限を加えざるを得ない。弁護士事務所や他のコンサル会社からは、さばききれないものなら、格安下請けでやりましょうというコールも多いが、すべて断っている。その「格安」がくせもので、見えないところで手抜きされてはたまらない。何よりも、私たちのような零細企業は、のれん以上大事なものはない。それに、社員や私自分の休息もしっかり確保したいので、適正な総量規制は避けられない。

 手帳にメモを取り終えると、さあ、夕食だ・・・

33565_3川湯第一ホテル忍冬館内(ロビー)

 19時、用意してくれた個室で夕食。献立はすべて道産物だ。

飲物  特別純米酒 まる田 (北海道栗山町・小林酒造)

付出 烏賊三升漬け
酢物 雄武産蛸カルパッチョ冷野菜添え
造り 季節の魚貝四種類
鍋 道産北海ちゃんこ鍋
焼物 鱈千草焼き
焼物 帆立貝のバター焼き <コース外、別途追加注文>
煮物代 標津産鮭信州蕎麦
蒸物 根室産雲丹茶碗蒸し
揚物 弟子屈産摩周ポーク変わり揚げ
台物 網走産ホッケちゃんちゃん焼風
食事 道産米ななつぼし知床鶏と山菜炊き込み御飯
椀 愛別産なめこ汁
香物 三種盛
水菓子 川湯産自家製南瓜パルフェ

33565_4川湯第一ホテル忍冬での夕食

 今夜の純米酒「まる田」は、実は初めての挑戦。「まる田」は小林家の屋号であり、脇田杜氏が北の錦を醸す歴史の中で「道産米で造る現時点での最高峰純米酒」にこの名前が付けられた。後から調べた紹介では、「香りよく非常に品の良い端麗な飲み口に仕上がっている」となっているが、私から見れば、いかにも北海道らしい荒々しさが躍動感を作り出している酒で、旅の感動が一気にクライマックスを迎えた。

 料理の方だが、基本的に温泉宿の料理には期待しない。専門の料理店ではなく、あくまでも宿だから、飛び切りの美味を求める客に問題があると思ったからだ。本日の料理は温泉宿で出されたものとして評価すれば、85点の秀逸ものだ。道産の食材にこだわり、色々と工夫されている痕跡があって、料理人のココロがしっかりと伝わった。

 21時 夕食終了、部屋に戻り、シガータイム。
 23時 就寝前の風呂。夜空の星を見上げ、雪見の露天は最高だ。
 0時  幸せな一日に感謝、就寝。

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