流氷紀行(8)~恐怖の蟹尽くし、北海道美食雑談

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 北海道旅行の醍醐味の一つは、もちろん「食」である。

33681_1知床のいくら丼、豪快!

 しかし、北海道には美味しい料理が少ない。

 といったら、罵声を浴びせられる。補足しよう。北海道には美味しい食材が一杯だが、美味しい料理は少ない、といっているのである。北海道の場合、素材、殊に海の物は日本でもトップクラス。これだけ素晴らしい食材だと、調理するのがもったいないし、生や焼き、蒸しなどシンプルな調理法が一番だ。そのため、料理人としての匠の技よりも、素材が先行してしまう。

33681_2宿の部屋から望むオホーツクの夕日
33681b_2地元の酒、「特別純米酒・流氷囲い」

 北海道の旅といえば、私は通算20回ほど行っている。下は函館、上は最北の利尻と礼文島、最東の根室・納沙布岬まで、ほぼ一通り回っている。北海道の「食」について、私が選んだベスト10を披露しよう。

 1位、何といっても生もの、刺身全般。
 2位、ホヤの塩辛(珍味)。 ちょっと癖があるが、なれると病みつきになる。
 3位、蝦夷馬糞ウニ。 海水と同じ成分の塩水につけられている。これも病みつき物だ。
 4位、厚岸産の牡蠣。 牡蠣の女王様だ。
 5位、羅臼のホッケ。 これ食べたら、居酒屋のホッケは一生食えなくなる。
 6位、知床の釣りキンキ。 一本釣りに限る。網で獲ったものとまったく違う。あの身の締まりと脂ののったうす赤く染まった体・・・
 7位、鮭児(ケイジ)。 幻の魚、1万本に1~2匹しか獲れない。卵巣・精巣は未成熟で産卵のために頑張っていない分、魚全体が大とろのように脂のりがよい。
 8位、いくら。 ど~んとご飯にかけて豪快に食す。
 9位、トウモロコシ。 野菜よりも、果物部類だ。私は、茹でないで生で食べてしまう。ジュースが飛び散る。
 10位、ジャガイモ。 うまく表現できない。この芋で幸せの絶頂に・・・

 上記は、やっぱり、順不同にする。甲乙付け難い。それから、とても、トップ10では収納できない。あの有名な蟹など、まだランクインされていない。

33681_3知床で四大蟹を食す

 そう、北海道の旅といえば、「蟹」。旅行会社も力を入れて宣伝しているが、私の場合、蟹よりもほかに美味しいものが一杯あるので、事前に周到な計画を立てて、毎食の内容をきちんとリストアップしているのである。が、今回は温泉めぐり中心の旅で、ほとんどの宿には朝夕の二食がしっかり付いているため、食に関して、選択の余地がない。ここ、知床の宿では、案の定、蟹尽くしコースが用意されている。不況もあってか、いつもの「三大蟹」が何と「四大蟹」になっている。

 タラバガニ、ズワイガニ、毛ガニ、花咲ガニ!

 大量に蟹を食べることを、実は、私は極力避けている。理由は、①味が単調になる、②腹が膨れる(他の料理が食べられなくなる)、③手が疲れる、④黙り込んで会話がなくなる、⑤食べきれないと極度の罪悪感に陥る、⑥手が汚れて匂いが取れなくなる・・・

33681_4蟹、かに、カニ・・・

 といっても、ここ知床の蟹尽くしコースは凄い。一人前というと、毛ガニ(大)1杯、タラバガニ足と爪(大)3本、ズワイガニ足(大・中)4本、花咲ガニ足2本+甲羅の半身、と驚異の量になっている。並の人では絶対に食べきれない量だ。それから、ほかにも料理の品数がかなりある。最後に蕎麦とご飯までしっかりついている。

 これは、まさに恐怖の蟹尽くしコースだ。

 「このコースって、お客さん、皆さん食べ切れるんですか」、私は小さな声で仲居さんに聞いてみた。

「いいえ、きれいに全部食べたのは、いままで、お嬢さん二人の一組だけでした」、仲居さんが大きな声で答えた。

 どんなお嬢さんたちだったのだろうね。と思いつつ、2時間15分を用いて、私はやっと完食。妻は食べきれず、中国暮らしの習慣でとうとう「ダーボウ」(打包=お持ち帰り)をお願いしてしまう。

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