【世界経済評論IMPACT】台湾戦争机上演習、日米は参戦するのか?

 米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は2023年1月9日、中国軍の台湾侵攻を想定した机上演習の結果を公表した。

 机上演習は、米国が参戦することを前提に行い、その結果のほとんどが中国軍の「敗北」、中国軍に「不利」と判定された。一方、台湾が単独で防戦した場合や、日本が在日米軍基地の使用を認めなかった場合には、中国が「勝利」した。

 ただし、上のシナリオはいずれも、経済戦争などを織り込んでいない。台湾防衛戦に、日本の自衛隊は軍用機122機、艦船20数隻を失うことになると試算されている。

 軍・民の死傷者数のデータは、未公表。
 国土・財産・主権毀損のデータは、未公表。
 日中間の経済制裁による経済的損失のデータは、未公表。

 損得勘定で、日本が得るものとは?日台の友情は間違いなく固まることだろう。ボランティアでもいいが、日本国民の合意が得られれば、大いに結構なことだ。まず国民に知ってもらうことが大事。私個人的に、今の日本は、政治的にも経済的にも社会的にも、参戦に耐え得る体力は、ない、と見ている。

 では、逆算する形で、中国軍が失敗か勝利した場合の2つのシナリオを描いてみたい。

 日米が動き、中国が台湾上陸に失敗しても、中国本土が日米に侵攻され、失われるわけではない。その場合、日中、米中は完全に敵国になり、第三次世界大戦の勃発もあり得る情勢だ。当事国の米国は太平洋の対岸にあって影響が相対的に少ないが、日本はどうなるか?日中貿易完全中断、日中断交、在中日本資産(敵産)の国有化になれば、その政治的・経済的インパクトで、日本国内はひっくり返る。

 中国が勝った場合、台湾に対する中国支配が始まり、第一列島線は完全に失われる。ただその際、日米が直接出兵しなかった(沖縄を含む日本の米軍基地も使わず)ため、かろうじて日本は国土毀損なく、米国もグアムと第二列島線の保全を得て、終戦する。

 机上演習からわかるように、日米が手を出さなければ、台湾の負けが確実になる。では、日米が参戦した場合のコストは、第三次世界大戦の勃発も含めて、両国が耐え得るものか。ウクライナ戦争に際して、米国は第三次世界大戦を避けるべき、直接派兵しない姿勢に徹したが、台湾戦争の場合、姿勢転換するのだろうか。

 今の日米には、「中国勝利」シナリオに備えて損害の最小化を図るのが現実的な選択肢といえる。陸路のない台湾は、ウクライナのような戦中後方供給ができない。島内の武器弾薬在庫をいかに積み上げるかがポイントだ。お金にもなるので、米国にとっては、台湾をスーパー火薬庫にするのが得策だろう。

 アメリカ人も、日本人も、台湾のために死ぬ準備ができていると思えない。

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