外国人の中国社会保険加入問題について

 外国人も中国の社会保険に加入するのか、それが義務なのか?

 「社会保険法」公布後、このような質問があまりにも多いので、あえて原則だけブログで開示する(詳細と対策は、12月7日の東京セミナーおよび、1月に予定されている上海、北京セミナーで述べることとする)。

 中国法に関して、常に法理的解釈・文言の解釈、立法意図、実務運用と三つの側面を考える必要がある。法の文言を読む限り、「・・・しなければならない」といわゆる義務化の明文規定がない。

 立法意図のほうでは、どうだろう。義務化の条件がまだ整っていない(二国間協定などの不備が主因)から、今の時点で明文化できないが、でも義務化に向けて方法論を模索するというのが中国の意図ではないかと考える。その背後に、国内の社会保険基金の大きな欠損が問題になっており、穴埋め問題で苦慮している様子が伺える。上海市の社会保険基金だけでも一説によれば100億元の穴が出来ているという。2010年10月の「上海市・年金給付受給延期申請の試行意見」は、「定年延期」をにおわせるものである。いずれも、上記を裏付ける根拠となるだろう。

 そして、実務面では、慣用手法として抽象的な大枠を示し、実施は今後の細則や実施条例に委ねられることが挙げられる。義務として明示しない一方、否定もしない。今後の運用に大きな余地を残すことは一目瞭然である。

 以上総合してみると、流れとして「義務化」の傾向が明確といえる。逆に企業として考えなければならないことは、たとえ二国間条約なき実施に踏み切った場合、つまるところ、外国人の社会保険は全額あるいは一部が実質的「掛け捨て」となった場合の対策ではないだろうか。

 最後になるが、日本のメディアの多く、そして一部の弁護士も、外国人の社会保険加入について「義務化」という表現を使用しているが、上記の論拠に基づいているかどうか、定かではない。念のため。