懐かしアルバム(3)~海と水の哲理・企業経営と人事制度編

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 私は海が好きだ。といっても、海が嫌いな人は世の中に少ないだろう。

 海が好きだから、海のある場所へ出かけたがる。旅先も海が選ばれることが多い。なぜ海が好きか。海が綺麗だという理由を挙げる人が多いのではないか。真っ青な空と真っ青な海、まさに旅先で出会う非日常的な光景をイメージする。

47115_2バリ島の海(2003年7月)

 しかし、非日常的な海よりも、日常的な海の魅力とは何か。海とは水の集大成である。水を冷やせば氷になり、氷に熱を加えると水に戻り、さらに熱を加えていけば水蒸気になる。水は液体、固体と気体という三つの状態になりえる。水ほど変化に富んだ物質はない。水は生命維持のための基本素材だけでなく、「温」と「涼」という両極端の機能をも人間に提供しているのである。

 人事制度には流動性が欠かせないものである。雇用がガチガチの状態になると、新陳代謝の機能が停滞し、毒が体内に溜まり、次第に善玉が悪玉に殺され、あるいは善玉が病変して悪玉へ変身していくわけだ。健康維持のために、朝起きたらまず水を飲もうと、人事制度も同じだ。朝のこの一杯の水を用意するのが、コンサルタントの仕事だ。

47115_3ハワイ島の海(2004年1月)

 財務制度だって同じだ。固定費用は氷だ。氷がたくさんありすぎると、突っかかってしまう。一方、変動費用は水であり、業務の実状に応じて変動費用を活用すれば、健全な財務状況を保つことができる。

 さらにいうと、企業は往々にして人件費を固定費用化する傾向があるが、正しい考え方とはいえない。それは財務上の配慮だけでなく、人事管理上健全な新陳代謝機能の維持にも欠かせないものである。

47115b_3コタキナバルの海(2004年5月)

 「流動性」というのは、資産がいつでもどこでも、適正な価格で換金できることである。取引する相手を見つけやすく、取引費用の低減にもつながる。企業の従業員は、人材市場での流動性でその資産価値、そして価格(賃金)が決まる。逆にその流動性を持たない、あるいは流動性不足な従業員は、やたら「安定雇用」を求める傾向が見られる。つまるところ、流動性を拒否する。そこで、企業が往々にして「安定雇用」の美名に利用され、いざ流動性を排除し、雇用制度をガチガチしたものにしたところで、今度流動性のパワーを見せ付けてくれるのが、優秀な人材である。彼たちは外へ流出していくのである。

47115b_4プーケット沖の海(2005年2月)
47115_4真っ黒に焼けた姿の帰途(2005年2月)

 私は、「安定雇用」にはまったく賛同である。ただ、その前提をはっきりしなくてならないと考える――「優秀な人材に、安定雇用」、しかも「安定」だけでは不十分だ。もっと、インセンティブを与え、経営にも参加してもらわなければならない。

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