【緊急速報】外国人の中国社会保険加入義務化決定か

 在中外国人の中国社会保険加入の義務化がほぼ確定されたようだ。

===≪以下、当社会員向け「ERIS中国法務人事レポート」2010年11月15日号抜粋≫===

 2010年10月28日、全国人民代表大会常務委員会は「社会保険法」を公布し、社会保険制度の基本法として、2011年7月1日から施行する。多くの日系企業から問い合わせが殺到しているのは、同法97条の「外国人の社会保険加入義務」である。

 「社会保険法」第97条の文言をよく吟味しよう。

 「外国人が中国国内で就業する場合には、本法規定を参照し、社会保険に加入する」。中国語原文では、「外国人在中国境内就業的,参照本法規定参加社会保険」となっている。

 通常中国語の法律用語である「応当」も、「可以」も使われていない。「応当」(インダン)とは、「○○しなければならない」であり、当事者の義務を明確に定める用語である。「可以」(カーイ)とは、「○○することができる」であり、強行性のある義務でなく、一種方向付け的な、あるいは選択性を付与するものである。

 ここでは、「応当」も、「可以」も使われていないというのは、きわめて抽象的な規範にとどまり、将来の解釈と運用に広範な余地を残すものとして理解すべきだろう。

 そして、「参照」という言葉もかなり曖昧である。「外国人も、本法を適用する」と、「適用」であれば「100%」を意味するが、「参照」では、上限100%下限?%というレンジ、いわゆる適用度合いの幅を与えるものである。

 「適用」、「準ずる」と「参照」の差異を見てみよう。

 ●「適用」=英文apply、applicable。基準も形式も完全一致を意味する。

 ●「準ずる」=英文equivalent。基準は同一でも、形式は必ずしも一致しないことを意味する。例:同等の、同価値の、同量の、同意義の・・・

 ●「参照」=英文refer。ある基準をモデルにし、新たに何かを作り出すことを意味する。「参照」というのは、未完結語であることに留意されたい。「参照して・・・○○する」である。クリエイティブ性を示唆する結果誘導的表現であり、「参照して」その結果が、「適用」になるか、「準ずる」になるか、あるいは「若干の乖離を伴う新たなもの」になるか、将来の結果に不確定性を付与している。

 以上まとめると、97条には、以下いくつかの表現と効果が考えられる。

<パターンA>
 ○中国語:「外国人在中国境内就業的,適用本法規定応当参加社会保険」
 ○日本語:「外国人が中国国内で就業する場合には、本法規定を適用し、社会保険に加入しなければならない」
 【効果】:加入の完全義務化。

<パターンB>
 ○中国語:「外国人在中国境内就業的,参照本法規定可以参加社会保険」
 ○日本語:「外国人が中国国内で就業する場合には、本法規定を参照し、社会保険に加入することができる」
 【効果】:加入の選択性付与 ⇒ 加入行為は強制ではなく、加入する場合は本法を参照する。

<パターンC>
 ○中国語:「外国人在中国境内就業的,参照本法規定参加社会保険」
 ○日本語:「外国人が中国国内で就業する場合には、本法規定を参照し、社会保険に加入する」。
 【効果】:上記パターンAかパターンBの確定ができない。あるいは、確定待ち状態である。

 現状(2010年11月現在)、新法はパターンCの文言と表現を採用し、AかBを不確定状態にした。よって、以下の展開を予測することができる。

 ① 将来的に実務において本条実施可能となった場合、「参照」の度合いを100%、つまり「適用」にまで引き上げ、なおかつ「応当」、つまり「加入しなければならない」と解釈することによって、パターンAに確定する。

 ② 将来的に実務において本条実施困難となった場合、「参照」の度合いを100%未満のレンジで調整し、「一部適用」「準ずる」あるいはもっと緩やかな形をもって、「加入しても、しなくてもいい」という二者択一方式、つまりパターンBに確定する。

 ③ AもBも明確にせず、Cのまま先送りにする。

===≪以上、当社会員向け「ERIS中国法務人事レポート」2010年11月15日号抜粋≫===

 直近の業界情報筋の情報によると、どうやら、上記「パターンA」+予測①の状況が確定されたようだ。つまり、外国人の中国社会保険加入の義務化である。

 本国との重複納付を避けるべく、二国間協議を急ピッチで進めるにしても、短期間内の実効性措置が難しいだろうと考える。だとすれば、本国と中国の二重納付で、実質上の「掛け捨て」になる。企業や個人にとって、大幅なコスト増が避けられない。

 さっそく、情報収集を急ぎ、7月初旬、遅くても7月末までに緊急セミナーの開催を予定している。

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