ハワイ(10)~「日本国ハワイ県」で考える「作為」と「不作為」

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 「日本国ハワイ県」

 「ハワイ」のカタカナに違和感があれば、「布哇」という漢字表記もちゃんと存在することをご存知?

 不謹慎じゃないかって?とんでもない。そもそもハワイはアメリカ合衆国の領土でも何でもない。立派な独立国家、ハワイ王国であった。

73088_273088b_2ラナイ島にあるもう一軒のフォーシーズンズ、英国調の「Four Seasons Koele Lodge」

 明治14(1881)年3月、ハワイ国王カラカウア一世が来日し、明治天皇と会談すると、突然、ハワイの日本による統合を申し出た。要は、日本によるハワイの連邦化と日本主導によるアジア共同体の創設を、カラカウア国王が提案したのだった。「カラカウア国王よ、からかわないでください」といったら、からかってません。その友好関係の証として、姪のカイウラニ王女と依仁親王(山階宮定麿王)の縁談まで持ち出すほど、カラカウア国王は本気で、真剣だった。

 しかし当時、国力増強で対外拡張の余力がないと判断されたのか、それともアメリカを恐れていたのか、日本の明治新政府は、極めて「丁重に」、ハワイ王国の申し出を断った。

 そのとき、ハワイを日本国の連邦にしておけば、後日の真珠湾攻撃はあったのだろうか、太平洋戦争は勃発したのだろうか。歴史は再演できないのが残念だが、日本がハワイを放棄したのはもっと残念だ。

 1898年、ついにハワイ王国は、アメリカ合衆国に併合され、消滅した。

73088_373088b_3「Four Seasons Koele Lodge」の美しい、広大な庭園

 ハワイは多くの日本人にとって憧れの地でありながら、このような歴史を知っているのだろうか。明治天皇がハワイの連邦案を受け入れたとしていたら、今のハワイはどうなっているのだろう。ハワイのフラダンスも、沖縄の島唄のようなものだ。ロコモコ(Loco Moco) はゴーヤチャンプルと同格に扱われるだろう。そいつは面白い。ぜひ、住民票をハワイ県に移して、住んでみたいものだ。そして、上海の県人会にも一つ、「ハワイ県人会」が増えるだろう。

 ハワイの海を眺めながら、荒唐無稽な妄想に耽ってみた。いや、決して荒唐無稽ではない。為政者の「作為」も「不作為」も、後世に絶大たる影響を与える。

ハワイ連邦化の「不作為」、そして真珠湾攻撃の「作為」、歴史はどう評価するか。

73088_4「あっ、鯨だ」、ラナイ沖には鯨やイルカが目視範囲内に出現する

 国の為政者も、企業の経営者も、「作為」と「不作為」の意思決定に、重責を託されている。大衆迎合に上意迎合、前例踏襲に思考停止で、意思決定を放棄する政治家や経営者を目の当たりにすると、日本国力の衰退もあって当然だと痛感する。

 政治家たちよ、社長たちよ、そして総経理たちよ、意思決定をしていますか?日本の国益、企業の社益、真剣に考えていますか?

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