【世界経済評論IMPACT】似非保守との対決、石破茂首相がもたらす日本の変革

 石破茂氏が自民党新総裁に選出され、首相に就任した。高市早苗氏との比較において、私は以前から石破氏の方が望ましいと考え、Facebookにも何度かその旨を投稿していた。石破氏は現実主義派である。一方の高市氏は「理想郷」的な保守右派であり、靖国参拝や反中など保守派にとっての「符号」を求める層に人気があるものの、実務的な政治家ではない。安倍晋三氏も同じカテゴリーに属し、似非保守層に人気のある「役者」として、演技がうまかったと言える。

 石破氏は日米安全保障条約の改定を提唱しており、日米同盟の「非対称性」を是正する必要があると主張している。彼は、米国と英国のような対等な同盟関係を目指し、その意図を米シンクタンクのハドソン研究所に寄稿した。石破氏はその中で、「非対称双務条約を改める機は熟した」と訴え、「今のウクライナはあしたのアジア」であるとも指摘した。

 私も石破氏の政策には賛同する。日本が中国と対峙するためには、まずは日米関係の是正が前提条件となる。そして、米国の代理戦争に巻き込まれることを避け、「国家の意志」を持つ日本として独立することが重要だ。石破氏がこれを実現すれば、彼は歴史に名を刻むだろう。

 石破首相は、政策論に長けており、「アジア版NATO」の創設と日米安全保障条約および地位協定の改正を掲げている。これら2つの政策は理論的には実現可能であるが、現実的には多くの課題がある。

 まず、「アジア版NATO」の創設に関しては、多くの実務的障壁が存在する。アジア地域は政治体制、経済状況、そして安全保障上の脅威認識が非常に多様であり、一致した防衛協力を築くのは困難である。特に東南アジア諸国は中国との経済的つながりを重視しており、「アジア版NATO」に参加する可能性は低い。加えて、領土問題や歴史的な対立が未解決のままであることから、加盟国間の相互信頼が欠如し、共同防衛の実現は厳しい状況である。

 次に、日米安保条約や地位協定の改正に関しても、多くの実現困難な要因がある。日本国内では憲法改正が大きな課題であり、米国にとっても同盟国に対する主導的立場を変更することは受け入れがたいであろう。

 こうした数々の障害にもかかわらず、なぜ石破氏がこれらの「非現実的」な構想を同時に掲げるのか。それは、ある意味では、非現実的だからこそ現実的な手段であるというパラドックスを秘めているのかもしれない。もし日本が対米関係でより自立性を持つことができれば、日本は独立国家としての意志を持ち、国益を最大化するための自己決定権を行使できるようになる。

 日米が対等なパートナーシップを築くことができれば、日米同盟はより透明かつ安定した形で運営されることが期待できる。現在の不均衡な同盟関係では、米国の影響力が過度に日本に働き、予測不能な事態を招くことがある。日本が自主的に判断できるようになれば、日米同盟の目的と行動方針が明確化し、中国にとっても予測可能性が高まる。

 また、日米関係が対等になることで、日本は米国一辺倒の安全保障政策から脱却し、より多様な外交戦略を展開する余地が広がるかもしれない。これにより、日本が中国との外交や経済協力を強化する可能性も出てくるだろう。

 最後に、日本の保守派について一言述べたい。日本の「保守派」は、世界的な保守の定義とは大きく異なる。保守主義とは通常、自国第一主義を掲げ、反米的な立場をとることが多いが、日本の保守派は親米的である。つまり、日本に不利益があっても、アメリカに逆らうことはタブーであるという風潮がある。

 第二次世界大戦では、アジアを白人の統治から解放するという大義名分があったにもかかわらず、戦後の日本は自ら米国の支配下に入り、媚びを売る姿勢をとってきた。この矛盾に対して、何も説明せず、説明しようともしないのが日本の似非保守・偽保守である。石破首相は、この矛盾に正面から立ち向かう数少ない政治家であり、私は彼に敬意を表したい。

タグ: