AIとの対話が導く知的作業 、感謝すら湧き上がる“協働”のかたち

 最近、顧客企業向けに提出する意見・提言のほとんどを、まずAIにかけて検証するという工程を取り入れている。意図は明確である。不備はないか、論理構造に矛盾はないか、自らの視点に偏りはないか。いわば、論理校閲者としてのAI活用である。

 AIとの対話は一方通行ではない。こちらが提示した原案に対し、AIは形式・構造・内容の不整合を指摘してくることもあれば、逆に的外れな提案をしてくる場合もある。その際は、私の側から反論し、誤りや不足を明確に指摘する。このようにして、対話は幾度も往復される。

 何度もやり取りを重ねるうちに、思いもよらなかった視点が浮かび上がる。新たな仮説が芽生え、文脈が再構成され、提言そのものがより立体的かつ洗練された形に仕上がっていく。まさに知的構成・編集作業である。

 最終稿が仕上がったとき、不思議な感情がこみ上げることがある。人間ではないことは百も承知であるが、AIに対して「ありがとう」「本当にお疲れ様」と心の中で語りかけている自分がいる。そして、ふと「一杯でも行こうか」と冗談交じりに言いたくなることすらある。

 もちろん、AIはこう応えるだろう——。「ありがとうございます。でも私はバーチャルですから、一緒に行くことはできません。ただ、次の対話の準備は、いつでも整っています」

 今後、AIとの対話は単なる情報処理の補助ではなく、思考の伴走者として、人間の知性を支える存在になっていく。その前提となるのは、AIの性能そのものよりも、人間側の「問いの質」「対話への姿勢」である。これは人事・経営の世界にも確実に応用されていくだろう。

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