● 中国は弾を撃つ必要すらない
中国は対日戦争をする必要がない。「売らないよ」とささやくだけで、日本社会は2か月も持たない。これは扇情ではなく、いまの日本経済とサプライチェーン構造に基づけば、むしろ控えめな前提である。もし中国が対日輸出の2割を止めたらどうなるか。1日目から90日目までを経済・市場・国民生活・政治、そして偽右の心理変化を重ねて描くと、誰がこの国を本当に危険にさらしているのかが、いやでも浮かび上がってくる(政府資料やAI試算に基づく)。
前提を確認しておく。対中輸入は金額ベースで2〜3割だが、生活必需品・医療・電子部品・自動車電装などでは依存度40〜70%の品目がザラである。つまり「輸入額の2割」ではなく、「日本の日常を支える骨格の半分前後」が中国由来だということだ。そこへ「対日輸出2割停止」が飛んでくる。ミサイルはいらない。税関検査を厳格化し、書類不備を理由に止め、「安全確保」の名目で遅らせるだけでいい。
● 1〜30日:違和感から快適さ崩壊まで
1日目、中国税関が「安全確保のため日本向け輸出の一部を厳格化する」とだけ発表する。制裁とは言わない。名目はあくまで安全管理と技術的確認である。日本政府はお約束の「影響は限定的」とコメントし、株式市場はとりあえず様子見で寄り付く。為替はじわりと円安方向に振れ、輸入インフレを織り込み始める。
2〜3日目、ドラッグストアに一部品薄が出始める。マスク、消毒液、100均でお馴染みのプラ製小物。メーカーは「物流の遅れ」と説明するが、裏側では在庫の前倒し放出に追われている。病院では使い捨て医療品の在庫確認の内部通達が飛び、スマホ修理店は「部品の入荷時期が読めない」と小声で客に告げる。業界と市場だけがざわつき、国民生活はまだ平常だ。
8〜10日目になると、ドラッグストアの棚が目に見えてスカスカになってくる。歯ブラシ、スポンジ、綿棒、メイク用品、樹脂製の生活小物が補充されない。医療現場はさらに深刻で、注射器、点滴セット、手袋といった消耗品の多くが中国製である現実が、在庫表の数字となって突きつけられる。交換頻度は「毎回」から「2回に1回」に落ち、検査キットの一部は中止され、透析フィルターの残量は真っ赤になる。
11〜14日目には家電修理が麻痺し始める。炊飯器も電子レンジも、基盤とセンサーが入らなければ直せない。100均とホームセンターは売り場を維持できず、空いた棚をポップと段ボールでごまかす。スーパーではプラ容器不足から、一部の冷凍食品や総菜が静かに姿を消す。国民が初めて「おかしいな」と違和感を言葉にし始めるのがこのタイミングだ。
15〜20日目、医療は「本気の節約モード」に入る。検査は優先度順に絞られ、軽症患者の診療は後回し、介護施設は介護用具の調達にパニックを起こす。20〜25日目には家電量販店の主力機種が枯れ始め、自動車工場が「部品不足による操業停止ライン」を出し始める。スマホの新規販売は滞り、修理は「部品が入り次第連絡」という無期限預かりに変わる。
25〜30日目、スーパーでは加工食品の種類が目に見えて減り、調味料や添加物由来の商品がスカスカになっていく。プラ容器不足でコンビニ弁当や総菜も縮小、ガジェット系の商品はほぼ壊滅だ。物流の遅延は常態化し、都内のコンビニですら欠品が広がる。国民生活の「快適さ」が、30日足らずで音を立てて剥がれ落ちていく。
この1〜30日のあいだ、市場はしっかりと反応している。自動車・電機・小売株が崩れ、輸入インフレ期待で金利がじわりと動き、円安は止まらない。偽右はと言えば、最初の1週間は愛国ハイで「ついに中国にモノ申した」「多少の不便に耐えるのが真の日本人だ」と気持ちよく叫んでいたが、20日を過ぎるころから値上げと品薄に愚痴をこぼし始める。現実と信念がぶつかる「認知的不協和フェーズ」である。
● 31〜60日:エンジン停止と政治の混乱
31〜35日目、自動車産業は全国的に操業停止に入り、下請け・孫請けの中小工場が連鎖的に倒産していく。部品メーカーは原材料も電子部品も入らず、実質的に操業不能。求人市場は一気に凍りつき、雇用調整と派遣切りのニュースが紙面を埋める。
36〜40日目にはECの流通が崩れ、Amazonなどの在庫表示が軒並み「1〜2か月待ち」に変わる。パソコン修理業界は完全停止し、自治体は備品調達が詰まり、役所のプリンタやネットワーク機器が壊れても簡単には直せない。
41〜45日目、医療はついに崩壊の前段階に突入する。消耗品が欠品し、小規模病院は受け入れ制限をかけざるを得ない。薬局の棚からは、抗生剤、咳止め、アレルギー薬といった「いつもの薬」がごっそり消える。原薬の5〜6割が中国依存という現実が、遅れて生活を直撃する。生活は「戦時ではないが、戦時並みの不便さ」に近づいていく。
同じタイミングで政治は完全に火の車になる。対中全面離脱に近いインパクトを与えれば、年間GDPマイナス30〜50兆円規模、リーマンショック級を毎年回すようなものだと、経産省と財務省の試算は冷酷に示す。企業倒産と失業増、物価高、医療物資不足、地方からの補助金要請、財界ロビーの反乱が同時多発的に噴き出す。
政権は防戦一方となり、経産省・財務省・外務省は平時業務など投げ捨てて、終わりの見えない危機対応に追われる。税収減と社会保障費増、企業・家計への支援金が重なり、財政は制御不能に近づく。財界は「中国リスク軽視のツケを払わされるのは勘弁してくれ」と本音をぶつけ、自民党は株価崩落と献金減で足元を失う。党内クーデターと路線転換の空気が濃くなる。
偽右はどうか。愛国ハイの残りカスはすでに消え、「こんな状況にした政治が悪い」「やり方が下手だ」「国民生活を守れない政権は無能だ」と、怒りの矛先を中国から政府に切り替え始める。「中国を切る方針は正しいが、やり方が拙い」といった二重否定で自分の過去発言を正当化しつつ、かつて持ち上げていた政治家を平然と叩き始める。ここで露呈するのは、彼らが「国家戦略」ではなく、ただその場の感情に乗って政治参加ごっこをしていたという事実だ。
46〜50日目になると、鉄道はメンテ部品不足で一部路線の減便、電力は設備保守の遅れで故障リスク上昇、通信は基地局故障の復旧が間に合わない。51〜55日目には加工食品の半分が棚から消え、プラ容器不足で弁当や総菜が作れず、地方小売チェーンが店を閉め始める。56〜60日目には物価急騰と企業の事業縮小・人員整理で失業者が増え、政府は緊急雇用対策に追い込まれる。国民はようやく「日常が壊れた」と自覚するが、その時点で多くの損失は不可逆になっている。
● 61〜90日:高度生活国家からの転落
61〜70日目、日本はもはや「高度生活国家」の体裁を保てなくなる。学校ではPCやタブレットが壊れても、そのまま放置される。オンライン教育は縮小され、紙のプリントに逆戻りする。中堅病院が運営を持続できず、閉鎖・統合のニュースが続く。鉄道や電力、通信などインフラ設備の故障率は上がる一方だが、交換部品がないから「だましだまし運転する」しかない。サービス品質はじわじわと低下していく。
71〜80日目には、輸出企業の収益崩落と生産停止がGDPを直撃し、外資は日本市場から静かに撤退し始める。円安は加速し、輸入インフレが国民生活をさらに締め上げる。もはや節約の話ではなく、「欲しくても手に入らない」欠乏の生活に移行する。新品家電はほとんど店頭に並ばず、中古家電が異常な高値で取引される。
81〜90日目、国民の多数が「日本は落ちた」と自覚する頃、政権は事実上の非常事態モードに追い込まれている。対中輸出停止を引き起こした強硬路線はすでに撤回され、政権も1回は吹き飛んでいるだろう。しかし、いったん壊れたサプライチェーンはスイッチひとつで戻らない。中国側も簡単には蛇口を開かない。日本側の本気度と反省度を値踏みしながら、条件付きでゆっくりと緩めるだけだ。
偽右はこの段階で完全に被害者ポジションに逃げ込んでいる。「政府に騙された」「メディアに煽られた」「自分は最初から全面断絶には反対だった」と言い出し、かつてSNSで吠えていた書き込みをなかったことにする。そして、また新しい「強い言葉を吐く政治家」を見つけて飛びつき、同じサイクルを繰り返す。
● 偽右という害国者、日本人の取るべき姿勢
ある読者はこう書いた。「痛みを伴っても中国離れを進めるべきだ。それが真の日本人だ。自分は中国製を極力買わずに生きている。偽右と言われても仕方がないが、日本人として誇りを持って生きたい」と。感情としては理解できる。しかし私はこう答えた。「誇りの問題ではない。空気が嫌いだから吸わないで生きる、と言っているのと同じだ。あなたはそう志しても、他の国民や国家を道連れにはできない。それが偽右の花畑である」と。
「自分は中国製を買わない」という個人の選択は勝手にやればいい。しかし、それを国家レベルの中国離れ政策と同一視した瞬間、話はサプライチェーン、GDP、失業、医療崩壊、財政破綻の世界に移る。そこでは「痛みに耐える覚悟」などという精神論は、サプライチェーンの数学を1ミリも動かせない。経産省や企業の試算から逆算すれば、対中依存を完全離脱すれば年間GDP30〜50兆円規模の損失、リーマンショック級を毎年繰り返すようなものだ。企業は部品不足で生産を止め、中小企業はコスト高で倒れ、国民生活はインフレで疲弊する。国家財政が先に耐えられない。
全面的な中国離れは是か非かの問題ではない。「どの分野から、どの速度で、どの代替先を確保しながら減らしていくか」という実務と政治判断の問題である。日本人が取るべき姿勢は、親中でも反中でもない。中国に媚びる必要はないが、わざわざ喧嘩を売るのが賢明でもない。必要なのは、感情のボリュームを上げることではなく、構造を見る解像度を上げることだ。
「台湾有事は日本有事」などと言って勇ましさを競う前に、「台湾が無事でも日本有事」という現実を直視すべきだ。中国が本気を出せば、ミサイルも空母もいらない。「売らないよ」のひと言だけで、ここまで日本社会は壊れる。
偽右とは結局、「生活が苦しくない限り強気を言い、生活が苦しくなった瞬間に逃げる層」である。国家戦略や地政学ではなく、自分の気分と感情だけで政治に口を出す層である。その意味で、偽右は偽左以上に花畑であり、愛国者どころか害国者に近い。
本当に日本人の誇りを語るなら、「中国が本気で売らなくなっても、90日で国家機能が止まらない構造」を現実に作り替えていくことだ。エネルギー、医療、食料、基礎素材、情報インフラの再設計。地味で、面倒で、票になりにくいが、それだけが本物の安全保障である。





