属地と属人コンサルタント、私の失敗談と東南アジア展開

 コンサルタントという職業。カテゴリ的に分類すると、属地スペシャリスト・コンサルタントと属人(企業)ゼネラリスト・コンサルタント。

 たとえば、中国に特化したコンサルタント。これは一種属地コンサルタントになる。中国のことを熟知し、スペシャリストとして豊富な中国スキルが売りである。僭越ながら、私自身もその一員として位置付けてきた。

 だが、ある問題が存在する――。クライアント企業の中国投資、中国事業が属地コンサルタントの商売の前提である。企業が中国投資をやめ、あるいは撤退する、ということになると、属地コンサルタントは直ちに商売を失う。

 そこで、中国投資の是非を問う時点で、属地コンサルタントと企業の間に一種の利益相反が生じる。要は、中国投資に向かない企業に、コンサルタントは堂々と「貴社は中国には来ない方がいい」と言えるのか。

 「情報の非対称性」という言葉がある。たとえば、中古車業者が中古車の重大な事故歴を知りつつも、それをはっきりそのまま、車買う気満々の客に言えるのか、それともそれを隠すのか、あるいは過小評価して伝えるのか。そこが「情報の非対称」(情報の格差)である。

 業者側が多く、全方位・全面的な情報をもちつつも、客はそうではない。そこで、業者が選択的に情報を客に伝える。業者の商売の成就に有利なプラス情報を集中的に拡大的に伝えたり、逆の情報を隠したり、過小伝達したりする。そこが大きな警戒を要するだろう。いわゆる消費者の自己防衛である。(ほかにも例がたくさんある。たとえば、不動産業者が把握している物件の欠陥情報とか、人材紹介業者が知っている人材の欠点とか・・・)

 中国関連の属地コンサルタントにとって、日中友好があって、日本からの投資が大きい方がより商機につながることは自明の理だ。しかし、情勢が変わり、中国投資のリスクが増大した場合、それは大変なことになる。

 何を隠そう、私自身も好例だ。2007年あたりから、中国の好況はいずれ衰えるだろうと予想しつつも、なかなか腰が重くてそのままずるずる3~4年経過した。ようやく2012年に大変だと躍起し、いわゆる属人(企業)ゼネラリスト・コンサルタントへの変身を決意し、その第一弾としてミャンマーに照準を合わせた。

 しかし、これも恥ずかしいながら見事に不発に終わった(昨年5月、ブログで公開したとおり)。ミャンマーに進出した日本企業はまだ少数で小規模、私がターゲットとする企業人事労務制度構築のニーズがまだ少なかった。それは決してミャンマー市場の問題ではなく、私のターゲット市場のタイミングの問題であった。

 そこで、ミャンマーではターゲット市場の熟成を待ちつつも、東南アジアあたりで新たなターゲットサーチをいま始めたのである。もう一回や二回失敗するかもしれない。失敗は恥ずかしいことではないので、気軽に公開すればいいと思っている。

 最近、自分のコンサルティングについて、属地的な部分と属人(企業)的な部分を強く意識して業務に取り組んでいる。中国では、リスクヘッジ案件や、逆風の中国市場に食い込める案件に絞り込み、数は一時期より減ったものの、確実な成果を上げていきたいと考えている。

 特に初挑戦となる東南アジア市場では、いろんな試行錯誤はあると思う。間違ったら、素直に認め、改めるつもりだ。もちろん従来通り、私の失敗談を皆さんとぜひ共有したい。