本土料理人で伝統的味を守れ!ぺナン地方政府の滑稽な立法

 地方条例として、マレーシア・ペナン地方政府ではホーカー(屋台)の調理人として外国人労働者の雇用を禁止する方針が固まった。

 ぺナンの地元の古き良き味という無形文化財の保護が立法の趣旨とされている。美食愛好家としてこの趣旨には大変賛成するが、ただこれで目的達成できるのか、副作用はないものかと素朴な質問がどーっと湧いてくる。

 地元の人なら古き良き味を保てる、外国人なら保てないという短絡的な結論は成立するのだろうか。地元の人がみんな調理師として働きたくなければ、この法令で逆に食文化の伝承が絶望的になるのではないか。ペナン人と結婚した外国人の奥さんも調理人として勤められないのか。旦那が病気で倒れたら、一家の生計が立てられなくなるのではないか。そして客も必ず古き良き味を追求しているのか・・・。

 立法というのは、大変複雑な作業で、いろんな利害関係者が絡んでいる。よく吟味するといろんな解決法があるのではないか。たとえば、「ローカル・クック」ステッカ。政府に、「うちの屋台の調理人は、かならずローカル・マレーシア人を使う」と申請する。政府から発行された「ローカル・クック」ステッカを屋台に張り付ける。

 マレーシア人の賃金が外国人より高い分、屋台料理の料金を引き上げる。このステッカを見て納得し伝統的な味を食べたい人は、そこで食べればよい。味はどうでもよく、安い方がいいというのなら、外国人調理師のところで食べればよい。これでみんなハッピーではないか。

 そこで、逆に外国人調理師が奮起して一生懸命古き良き伝統的味を身につけ、ノンステッカ店でも味がよくなおかつ安いということになれば、自然に口コミで客がやってくる。これこそ、市場競争のメカニズムではないだろうか。

 現に、パリあたりでフランス料理の腕に定評をもつ日本人シェフもいるくらいで、本土料理人の発想自体が時代遅れではないだろうか。