失敗談、自分設計のマイホームの夢が消えた

 昨日のこと、私の失敗談である――。

 結論からいうと、マレーシアでの土地購入と自宅建設工事を断念した。

 外国人購入最低限度額をクリアすべく、土地購入にマレーシア人名義(被信託人)を使い、そこで建物を建て土地プラス建物という不動産の全体価値を引き上げ、法定最低限度額をクリアした時点で名義貸しのマレーシア人友人Aさん(被信託人)から外国人の私(受益者)に譲渡するという法律スキームだったが、被信託人と受益者の間に締結する信託契約の条文について、Aさんから内容の大幅変更を求めてきた。こう述べた――。

 「契約内容をより完全なものにしたい。われわれは古い友人で、このような法的関係から生まれるリスクで友人関係を壊したくないから、こう求めている。だからこそ、完全な契約にしよう」

 一瞬体に電気が走った。そうだった。まさにその通りだ。純粋な友人関係にそれ以外の関係をいま持ち込もうとしているのではないか。それ自体がリスクではないか。

 つまり、友情という「情」に、いま、契約という「法」を注入しようとしているのだ。そこで友情を壊さないために、完全な契約を求める。では、完全な契約というのは存在し得るのだろうか。

 契約というのは、あくまでも法律専門家が現状や予測、想定に基づき、リスクの最小化を図る作業である。リスクをゼロにすることはできない。どんな専門家でも将来を完全かつ完璧に描けるはずがないからである。

 友情を永続的に保っていくには、「情」以外の「法」などの他成分を全く持ち込まないことではないか。私自身がいつも他人に説いていること、いざ自身がその立場に置かれると、危うく忘れるところだったではないか――。

 信頼しているから、金銭や権益を託し、利害関係を作るのではなく、まさに逆であって、信頼しているからこそ、永続的な信頼関係を維持していくために、友情以外の利害関係を持ち込まないことではないか。

 Aさんのリマインドによって、私の覚醒が喚起された。早速丁重に理由を説明し、信託契約の締結を断り、土地購入をキャンセルした。すでに支払った50数万円分の手付金と弁護士費用は捨てたことになるが、その代りに友人一人を失うリスクや負担から解放され、また多く勉強できたこと、いずれも金で換えられないものである。

 ということで、私のマレーシアでの土地購入は失敗した。自己設計によるマイホームの夢が消えたのである。

コメント: 失敗談、自分設計のマイホームの夢が消えた

  1. なるほど。つまり、立花さんご自身の原則による決定であり、お友達は必ずしもその原則を理解したわけではないということですね。立花さんのお友達であるのも大変ですね。

    1. 価値観を共有するのは友達です。友達は夫婦と違って離婚するような複雑な手続きを経ずに友人関係を解消できます。離婚というのは、「情」(愛情)と「法」(夫婦という法的関係)の混合体の不調和から生まれるトラブルです。友達は価値観を共有できれば、友達であり続け、ダメだったら分かれればよい。だからかく乱要素となる法的関係を入れない。友達でありながら、大変な思いをしたくないことは、まさにおっしゃる通りです。その通りです。

  2. オブラートに包まれた書き方をされているので、よくわからないのですが、マレーシアのご友人は、友情関係を完全なままにするために契約の補完を求めたわけですね。つまり、契約がご友人の納得のいくものになれば、契約を続行しても友人関係には影響を与えないと考えているということです。
    これに対して、立花さんは契約の存在そのものが、友人関係を阻害していることに気付いたと申し出て、契約の破棄にしてもらったということですね。
    この理屈は、マレーシアのお友達には完全に理解されたのでしょうか。それとも、契約の補完の主張が立花さんの気に入らないものであったと理解された可能性もあるのでしょうか。

    1. 泉さん、すべて書いたとおりです。法と情の相互かく乱要因を排除するうえでの切り離しです。

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