宿命と運命、オバマ大統領の日越訪問が示唆するもの

 ベトナムと日本、共にアメリカと戦った敵国であった。オバマ大統領の歴訪は何を意味するか。しかも、ベトナムへは武器禁輸の全面解除、さらに「サイゴン陥落」のホーチミンと原爆投下の広島への訪問。いずれも意味深長。

 戦後の世界秩序が変わろうとしている。それ以外の解釈はあるのだろうか。元の敵が友になるのは喜ばしいことだが、元の友が敵になることも悲しいながら、いずれも避けられない歴史的宿命であろう。

 宿命(さだめ)は運命と違う。運次第や運任せといった不確定性よりも、何かによって定められているという必然的な帰結を暗示し、また確実にこの結末に指向する。その何かとは、決して正義ではなく、自己保存の本能とそれに資する利益なのである。敵対関係の裏にはまぎれもなく2つの正義が存在する。また友同士も結盟関係の大義名分の影に異なる正義が必ず潜んでいる。

 国家という最大利益単位も、個人という最小利益単位も、その原理は変わらない。われわれ人間にとって、運命を期待するよりも、宿命を見定めることがよほど建設的である。また宿命の見定めによって、運命も変わるものだ。

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