「弱肉弱食」「強肉強食」の時代、自分のために何ができるか

 日本人にとってさらに悪いニュースが2つある。

 1つ目は、「弱肉弱食」。その代表格は移民政策。保守系の自民党がなぜ移民政策を検討し始めたかというと、いろんな理由があるだろう。それはここで議論しない。

 まずいえることは、移民政策は大きな賭けである。失敗は許されない。土地に住み着き生活基盤を作り上げた外国人を追い出せないし、そして結婚や出産で2代目や3代目が増えていく。これを受け入れる文化的社会的基盤は日本にできているのだろうか。

 次に優秀な外国人を移民させるというのが一方的な願望だ。正直優秀な外国人は日本には移住しない。より開放的、個人的可能性の大きい欧米に目を向けるだろう。いまの日本では、優秀な外国人の移住を動機付けられる要素は皆無に近い。結局単純労働者しか日本にやってこない。

 日本で外国人メイドを雇えるようになるのは、金持ちには都合がいい。しかしよく考えると、いまの日本は本当に労働力不足であろうか。むしろ労働生産性の問題ではないだろうか。外国人労働者の参入は労働市場の競争を激化させ、日本人労働者の賃金アップにつながると思えない。

 世の中を見ても、移民政策が成功する国よりも、失敗する国のほうがはるかに多い。成功事例として挙げられるカナダやブラジルなどからは、日本はどれだけ類似点を探し出せるだろうか。

 為政者にとって都合がいいのは、日本人と移住者の対立が激化することだ。いわゆる国民に「敵」あるいは「仮想敵」を作ることが帝王学の必修内容である。国民の矛先が政府よりもほかの標的に向けられるからだ。

 2つ目の悪いニュースは、「強肉強食」の人工知能。これは何回も書いたことで、ここでたくさん繰り返す必要もなかろう。

 これまで資格を必要とする、いわゆる強者の部類に入る職業も危険にさらされている。司法書士が携わる定型業務は人工知能に奪われ、弁護士でも法令・判例検索あたりは人工知能に持って行かれるだろう。薬剤師も危ないではないか。処方を処理するロボットが活躍するかもしれない。

 もう1つ、外国語。これは多くの日本人家庭では、英才教育として子供たちに取り組んでいるが、いざ翻訳・通訳の人工知能が普及すれば、外国語が普通にできることは何ら強みでもなくなる。高度な専門分野の通訳、あるいは国連にも通用するような高度な同時通訳のような人材は生き残れるが、ほかはかなり厳しいだろう。

 世界は、「弱肉強食」の時代から、「弱肉弱食」や「強肉強食」の時代に移行している。新産業革命が確実に起こっている。国や企業がどうしてくれるとか、もうそういうことを言っている人は自分に無責任である。「国のために何ができるか」よりも、まず「自分のために何ができるか」だ。