日本の沖ノ鳥島はどうなるか、南シナ海判決の実質的影響

 南シナ海の国際法判決ついて、政治的報道が多く、法的解釈が非常に少ない。私の限られた国際法の知識から少し解釈し、影響を分析してみたいと思う。

 (1) 今回の判決は、「島」という概念に対し明確な定義を行った。それは、国連海洋法条約における画期的な重要な解釈である。その結論は、「南シナ海に島は存在しない。存在しているのは、岩礁だけだ」である。

 (2) 上記により、中国だけでなく、フィリピンやベトナム、マレーシアが実効支配している「岩礁」にも同じ効果が発生し、これらの「岩礁」を支配する(主権の主張)正当性を失うことになる。ただ、これが不利な結果でなく、むしろこれらの国にとって有利な結果になる。南シナ海に「島」が存在しなければ、すべてリセットされる。フィリピンやベトナム、マレーシア等はいずれも南シナ海沿岸国で、自国海岸線から200海里(370.4km)の範囲を、排他的経済水域(EEZ)を設定できるようになる。つまり、失うものより得るものが多いわけだ。

 (3) 「島」の定義の明確化によって、日本の沖ノ鳥島も「岩礁」とされ、日本の主権に影響が出かねないという懸念はないか。結果的に、私は「ない」と思っている。理由は以下3つだ。

 ① 日本に影響が出るという仮説は、紛争が起こることを前提とする。日本の沖ノ鳥島に対し他国が国際法裁判所に提訴することを前提とする。中国は日本の沖ノ鳥島について文句を言いつつも、提訴する可能性はほとんどないといっていい。提訴すれば、南シナ海の「岩礁」を認めることになり、自らの主張の違法性をも認めることになるからだ。この自己矛盾、ジレンマを抱えているのが中国だ。

 ② さらに仮説を立てよう。仮に沖ノ鳥島問題が提訴された場合、南シナ海判決の結果が援用され、日本は敗訴に追い込まれるかというと、これも必然的帰結ではない。国際法の裁判では、まさに「Case by Case」であって、1個の判決は後続案件の判決に対し影響を及ぼさないことになっている。つまり個別案件は個別審理で、いわゆる既存判例の影響を受けず、前後案件の判決はそれぞれ独立しているのである。

 ③ では、前後案件の判決が矛盾した場合は?それでも前後の判決はそれぞれ独立した判決で、平等性を有する。つまり、相互の矛盾があっても問題にならない。それは国際法と国内法の本質的相違である。国際法は、国内法のように上下級裁判所の差もなければ、最高裁という最終審もないからである。言ってみれば、やったもん勝ちなのである。

 だから、日本の沖ノ鳥島は別問題であって、南シナ海と何ら関係もない問題である。日本国の領土として正当に所有し続ければよい。

 (4) では、南シナ海判決の意義は?正直、強制執行のできない国際法判決は、法的意義はそれほどない。ただ、政治的な意義が余りにも大きい。今後数年にわたって、国際政治の世界では中国が国際法無視という背徳の負い目を負い続け、大国の名声が大きく傷つけられ、修復はそう簡単ではない。

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