労働法フォーラム(2)~柔軟雇用における明暗の分かれ道

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 フォーラムの基調講演。アメリカ、日本とドイツからの海外ゲストスピーカー3名が、それぞれの国における「柔軟雇用(非正規雇用)」の現状・課題と方向性について講演する。

 ジョシュア・バイエンストック氏(Joshua E. Bienstock、米ニューヨーク工科大学教授・弁護士)は、労働者側の目線から、硬直化した通勤・オフィスワークの形態よりも、もっと柔軟な勤務時間や勤務場所によって、家族団らんの時間、余暇を楽しむ時間を増やし、個人的自由を手に入れるという側面を取り上げ、柔軟雇用の可能性を評価し、それが労働者を不利に陥れる制度だという偏向的な批判を批判し、むしろ自ら柔軟雇用を望んでいる労働者も大勢いることを指摘した。

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 香川孝三氏(神戸大学名誉教授・大阪女学院教授)の講演は、非正規労働者の権利保護、正社員転用への道を開くための法整備という基調のもとで、正社員雇用の優位性を前提に、非正規雇用労働者の不利な側面を強調し、日本の「暗い」現状を浮き彫りにするやや「暗い」論調で終始した。

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 ハインツ・シュタインメヤー氏(Heinz Dietrich Steinmeyer、独ミュンスター大学労働法・社会保障法研究所所長)は、国家全体の経済・社会という俯瞰的目線を取り、硬直化したドイツの雇用体系が経済を崩壊直前という崖っぷちに追い込んだ元凶の1つであり、この危機に瀕したドイツ経済をを救ったのはまさに、雇用形態柔軟化の労働法制度改革だと、真正面から「柔軟雇用」の優位性を評価し、明るいムードを漂わせた。

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 三人三色の講演であった。

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