公式発表の半分以下?中国のGDPを悲しむ暇がない

 中国のGDPは、公式発表の半分もないか。つまり、3%程度ということだ。

 昨日8月7日付のロイター記事「中国経済成長率、実際は公式統計の半分以下か 英調査会社が試算」は次のように報じた――。

 「ロンドンに拠点を構える独立系調査会社ファゾム・コンサルティングは昨年、公式GDPの予想を公表するのをやめ、実際の成長率とみなす数値を公表することを決めた。それによると、今年の中国成長率は2.8%、2016年はわずか1.0%にとどまると予想している」

 何も驚くべきことではない。私は2014年4月27日と28日付けで、立て続けに2本のブログ記事を書いた――。「事実上ゼロ成長の中国市場、幻想か夢想か理想よく考えよ」「水野氏とのGDP議論、中国経済は低迷か見解分かれる」

 旧事を蒸し返すが、昨年4月当時、友人で中国ビジネス・コンサルタントの水野真澄氏は、当時7.4%だったGDP伸び率をめぐる「景気減速鮮明」の言説について、「誘導的」「扇情的」と評し、「目標値に1%未達、まずまず高い伸び率である」という見解を示された。

 そこで、私は、「事実検証に任せるしかない。半年後または1年後、経過を確認したうえで、短中期の中間まとめとしたい」と答えた。

 答えはもう出ているだろう。さらに、水野氏自身もベトナム拠点の構築に取り組まれていることは、何より時世を反映し、中国の斜陽を物語る正しい経営選択であろう。

 山場は来年以降だ。GDPの公式発表はおそらく6.5%ないし6%に低下するだろうが、実際はどのくらいか。さすがファゾム・コンサルティングの1.0%予測では少々厳しすぎるだろうが、3%を切るのではないかと私はそう感じた。

 何よりも、社会安定に直結する雇用の問題は深刻だ。安定雇用の最低ラインであるGDP伸び率の8%がもはや幻想になった以上、地獄はもうそこに見えている。解雇を厳しく規制する中国の労働法それ自体が足かせになり、多くの企業は新規雇用を最小化、あるいは凍結する。毎年大卒800万人も学校を出ては行き場を失い、その大半がプー太郎やプー子になる。労働法は労働者になれる人しか保護できないから、労働者にすらなれない人はにっちもさっちもいかない。そして、賃金は、ブルーとホワイトが完全逆転する。ホワイトカラーの低賃金化が進む。外資企業の撤退もさらに加速する・・・。

 地獄絵を描くのをこれくらいにしよう。「立花が煽っている」と思われるのも面白くないし、私自身も自社中国事業の売上の低迷や下落にはうれしい悲鳴を上げるほどの異常者ではない。さあ、水野さんと一緒にベトナムへでも行くか。

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コメント: 公式発表の半分以下?中国のGDPを悲しむ暇がない

  1. 正反対の観点だからこそ、議論をする価値があるのであって、同じ観点だったら議論する価値はないと、個人的は思うのですけれどね。

    私の主張はあくまで可能性の存在の主張なので、反証がないのであれば、もちろん、これで終わりで問題ありません。素晴らしいコメント欄をありがとうございます。民主主義万歳。

    1.  議論する価値の有無は、各人の価値観ですから、申し訳ないが、あなたと議論する価値がないというのが私の価値判断です。

  2. 「だからGDPで評価されるような経済の沈下が、先進国ほどには直接的に人々の生活に影響せず、それが政治的な安定性を揺るがす可能性は非常に”高い”と言えるのではないでしょうか?」

    見直し抜けがありました。訂正します。
    「だからGDPで評価されるような経済の沈下が、先進国ほどには直接的に人々の生活に影響せず、それが政治的な安定性を揺るがす可能性は非常に”低い”と言えるのではないでしょうか?」

  3. 「地獄絵」。立花先生は、大袈裟なんだから。

    確かに、立花先生のビジネスのスコープにある日系企業にとっては地獄絵ぐらいのインパクトがあるかもしれませんね。

    しかし、全人口の一部にしかすぎない。しかも、都会志向の大学生の就職難ぐらいでは中国は揺らがないでしょう。そもそもが、大学に子供を行かせられるということは、中国の中で、家庭環境・経済環境がかなり上だということです(中には苦学生もいるでしょうが)。次の世代になればわかりませんが、現状では親に寄りかかったニート生活も可能でしょうし、田舎に帰れば仕事も紹介してもらえるでしょう。

    あと、中国は日本と違って広いんですよね。日本だと、ナショナルブランドが全国を支配してしまっているケースがほとんどです。コンビニ一つとったって、セブンイレブンを筆頭として、2,3のチェーンが全国制覇をしてしまっています。だから、就職先も、全国統計の影響をモロに受ける。

    しかし、中国はどうでしょう。ちょっと地方へ行くとわかりますが、その土地土地でのブランドがまだまだ幅を利かせています。つまり、就職難といっても、選り好みしているから就職難なんであって、地元なり、地方になり行けば、仕事はあるんです。

    労働法なんてのも、大都市でこそ厳しいけれど、地方へ行ってしまえば、ほとんど効力がないと言えます。だから、労働法が怖くて雇えないなんてのも大都市での話でしょう。

    「地獄絵」というのが、大恐慌時代のような、就職難で人が道端に溢れているとか、日本の大晦日の派遣村のような状態を指しているのだとしたら、そんな日が来るのはまだまだ先だと思います。(都市での就職難が年々ひどくなっているというのは同意致します。最近は人集めが非常に楽だそうです)。

    1.  大袈裟な地獄絵を無視して結構ですよ。本稿にも言っていますが、経済や政治の将来予測は後日検証ですから、樋川さんとここで議論しても意味がありません。

      1. 「毎年大卒800万人も学校を出ては行き場を失い、その大半がプー太郎やプー子になる。労働法は労働者になれる人しか保護できないから、労働者にすらなれない人はにっちもさっちもいかない。」

        この辺りの分析に若干疑問点があります。確かに内定率30%なんていう報道があるから、そりゃ大変だ。毎年500万人も人が余るのか・・・。とびっくりしますが、本当にそんな足し算で失業者が増えて行ったら大変なわけで、実際には2年目ぐらいはともかく、多くは大都市での就職を諦めて田舎に帰るなり、2級都市で就職するなり、郊外の工場で就職するなりと落ち着いていっていると思われます。ニートが累積していくわけではないんですね。まして、中国では新卒でなければダメだという概念はないですから。

        あと、GDPが経済に与える影響もそうです。GDPは様々な方法で計算されるそうです。いい加減な中国政府のGDPの発表は確かに当てにならないでしょうが、果たして先進国の機関が本当に正しく中国のGDPを測定できているのかという疑問があります。

        都市の経済状況などは、先進国に近いものがありますから、税収入によらなくても推定は比較的容易でしょう。しかし、現在の中国の大きな変化は郊外やさらにローカルな地方で起きています。外国の機関が、限られた予算とスタッフで、この状況を本当に追い切れているのでしょうか。非常に疑問です。

        そして、人々を囲む経済環境についてもそうです。日本などでは、大工場や大手スーパーがバコバコと立って、地域経済の要となるローカルスーパー、小規模商店、個人商店をことごとく踏みつぶされ、就職先が大手工場と大手スーパーしかなくなってしまいました。だから、景気が悪くなって、大手工場の稼働率が落ちたり、大手スーパーが撤退したりすると、労働者たちは途端に途方に暮れることになります。

        しかし、中国は土地が広いこと、開発の状況が違うこと、多民族であること、経済レベルに大きな格差があることなどが手伝って、経済が大手またその系列だけで成なっているわけではありません。また、規制が少ないことから、個人が生活していける手段が非常に多様です。

        だからGDPで評価されるような経済の沈下が、先進国ほどには直接的に人々の生活に影響せず、それが政治的な安定性を揺るがす可能性は非常に高いと言えるのではないでしょうか?

        1.  実質的GDPの計測にはいろんな独自指標ないし「裏指標」があるので、評価者によって異なるデータが出ます。私は基本的にロイター発のソースに賛同します。あとは、おっしゃる通り政治的要素を取り入れて考える必要があります。いやむしろ政治的要素を「重く」吟味しないといけません。その辺は申し訳ないが、公開ブログの議論に適していませんので、致しません。

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