「中国大学生に見捨てられる日本企業、なぜ敬遠?背景にうつ病発症の中国駐在員急増」
見出しに釣られて思わず読んでみたが、記事に取り上げられた渡部氏のコメントに、いくつか誤認と思われる点があって指摘させてもらう。
中国人学生に就職先として日系企業の魅力低減の原因として、「研修体制が不十分、伝統的な人事労務管理、リーマンショック後は給与も増えない」と挙げられているが、少なくとも総括的な結論付けには少々短絡的ではないかと考える。
まず、「研修体制」について、私自身も多くの日系企業から中堅・幹部育成研修の依頼を受けているし、全般的に経営現地化を図る上で研修教育と育成に関心が高く、焦っている企業も多数見られる。むしろ、問題は研修体制そのものではなく、研修を受けて職場に戻ったときの「旧態依然」、周辺環境整備の立ち遅れが大きな妨害要素になっているのではないだろうか。
次に、「伝統的な人事労務管理」の問題。ある意味で私は逆だと思う。日系企業に入社した多くの中国人従業員がまさに伝統的な日本企業の「安定した」雇用制度に得点を挙げている。だが、中国の企業経営現場ではいわゆる日本の真の伝統的な雇用・賃金・人事管理が整合性をもって実施されていないのが最大な問題になっている。ミスマッチがあったということだ。
最後に、「リーマンショック後は給与も増えない」という観点について、これはどのような調査に基づいて結論付けられているのか、まったく見えない。逆に賃金上昇のペースに悲鳴を上げる企業が多く見られているのではないかと、私は感じているのだが、視点の違いなのか・・・。
さらに、渡部氏が提示された「日本の本社による現地駐在員のメンタルヘルス対策の不足によって、中国の学生たちにも魅力ある企業として映らなくなる」という結論にも疑問を思う。日本人駐在員のメンタルヘルス不足が事実なのかもしれないが、これが中国人学生の就職意思との因果関係はあるのだろうか、あるとすれば、どのようなものか。論証がない。
何よりも、この記事の見出し、「中国大学生に見捨てられる日本企業、なぜ敬遠?背景にうつ病発症の中国駐在員急増」に違和感を感じるのは私だけだろうか。